2020年8月31日月曜日

江戸の美術 大図鑑

江戸の美術大図鑑

伊藤若冲 象と鯨鈴木芙蓉「那智瀑泉真景図」は是非1度現物を見ておきたい。

狩野探幽[一ノ谷合戦・二度之懸図屏風]。浮世絵とも違い、こういう画風を何と言うのか知らないが、全員が同じ顔の角度で描かれるものだと思っていたが、後ろ向きも混在させて描かれる事もあったのね。

日本人の坐り方

日本人の坐り方

千利休のあぐら。へうげもので座り方に変化や扱いがどんなものだったのか忘れてしまったので、再読したい。

下駄や袴の板は簡易椅子。

正座は和服で有効。洋服の時点で礼儀もクソも無い。

ポホヨラの調べ - シベリウスに見る強弱記号の重要さ

ポホヨラの調べ

シベリウスを中心に指揮者が北欧クラシック音楽を解説した本。

文章の半分はポエムで気持ち悪いが、簡単な楽譜が記載されて強弱記号の重要性を解説してたのは良かった。

初稿にあったクレッセンド,ディミニエンドが何故か印刷では削除されていた話は面白かった。

魅了されたニューロン 脳と音楽をめぐる対話

魅了されたニューロン: 脳と音楽をめぐる対話

現代音楽で有名なピエール・ブーレーズ。

音楽の本質は[作る/弾く/聞く]作業の総体。何か1つの音に対する反応だけで科学的に人間の音楽的反応は計測できない。

鳥は絶対音感。人間も生まれた時は絶対音感だが成長して失う。なぜ人類は相対音感を選択したのだろうか?

人間は音に関して水平(旋律)の変化には敏感だが、垂直(和音)には鈍い。

13だか16声の対位法を指揮したが、聴覚で把握しきれず演奏者に詫びた。

プロコフィエフ短編集

プロコフィエフ短編集 (群像社ライブラリー)

みんな大好きProkofievだが小説を書いてるとは知らず図書館にあったので。

複数の作品が収録されてるが未完も多い。面白かったのはエッフェル塔。

気晴らしなので未完も多く、かつ彼に目的は行動を描く事にあり、根拠や結論は無い。

彼の来日した時の日記も収録されていて、割と一喜一憂で雑(傲慢)な性格で笑った。

「空腹」が人を健康にする

「空腹」が人を健康にする

ハンガーマップによると飢餓の国ほど出産率が高い。

暑いより寒い、満腹より空腹の方が人体は活発、活動しやすい。

1日1食を基本に、間食は煮干し鰯やヨーグルトなど。

珈琲や緑茶はカフェインや消化を目的の時以外は惰性で飲まない。

本書を契機に牛蒡茶を飲み始めた。

厚黒学 - どこの国も国という枠を活用できずに個人の殺し合いに終始してる

厚黒学 腹黒くずぶとく生き抜く (Shinkosha Selection)

ケンリュウの関羽なんかを読んでも思うが、中国にも利他主義や自己犠牲などの善行は概念としてあるし、少なくとも善悪の価値観はある程度を他国と共有している。

それでも、理想主義的な現実も断片が他国よりも見えないのは何故なのだろうか?

いつ、どこ、誰でも問題はある。日本も例外では無い。しかし、先進国は実現性はともかく反発が可能だし、あるいは妥協して対立を回避も可能なのに、何故中国はそこまで極端なのか。

ロシアにも言えるが、共産主義は民主主義や資本主義の問題を解決出来ていないし、経済格差の前には主義が何だろうが無意味。

結局は、どの国も、国という枠を活用できずに個人の殺し合いに終始してる。

与太郎戦記 - 春風亭柳昇

与太郎戦記 (ちくま文庫)

戦後間も無く米兵に媚びる女に「大和撫子はどこに行った」と批判しているが、そもそも、それは存在しない。貞淑とは自衛の1つに過ぎ無い。

筆下ろしは、当時興味ないとしながら事後にうんざりしながら何度も通ったと正直に書いてある。つまり、これが男の本質であり欠陥でもある。大和撫子と同様に。

郝景芳短篇集 エクス・リブリス

郝景芳短篇集 (エクス・リブリス)

折りたたみ北京が面白かったので。

しかし、環境や状況よりも感傷が優先され、自分には人間至上がくだくだしくつらかった。

折りたたみ北京

折りたたみ北京 現代中国SFアンソロジー (ハヤカワ文庫SF)

郝景芳

-> 表題作と”見えない惑星”いずれも収穫だった。

-> 基本的に[旅行/冒険]による発見と損失の価値観が描かれる。

-> しかし、ノーラン規模の設定ながら彼は冒険を優先するが、彼女は生活や主観を優先する。

-> ここらが男女の明確な傾向差。設定上長年にわたる秩序を些細な偶発で捨てるのはいかにも女の作家。

-> 大規模に関する設定はガバガバだが、小規模の関係は細かい。

-> いちおうディストピアだが、必ずしも絶対悪ではなく恩恵も描いてる点が真面目。

劉慈欣

-> 三体の作者。

-> 始皇帝が300万人の兵士の手旗信号から2進法で円周率を計算するというネタが面白い。

-> しかも、計算中に濃霧で手旗が見えず苦戦するというコントに笑った。

沈黙都市

-> よくあるディストピアだが、言論統制と対抗策の設定が具体的で、究極的に0と1で[言葉/会話]は成り立つ話は面白かった。

肩をすくめるアトラス - 今読むにはあまりに幼い理想主義

肩をすくめるアトラス

聖書につぐアメリカ国民を作り出した本と聞いて読んだが、いやあ酷かった。

人間の本質は挑戦と成長になる。これには全く同意する。

共産主義(社会主義)を批判目的としているが、1957年当時は毛沢東の失敗を予言してる点でも凄い作品だったのだろうが、個人主義、自由主義、資本主義もまた癒着や独占など共産主義と同じ問題を抱えてるのを知る現代人には、主張があまりに幼い。

ケンリュウの結縄はこれの対比なのだろうか?

本作が礼賛する資本主義的な道徳が全く無効で現実的な悪行をやる事を示した結縄の方が、余程資本主義を捉えてる。

MMTに限らず、もはや金本位制が成り立ってない先進国に生きる我々には、金に価値だけじゃなく意味まで求めてることには苦笑。

また、福祉に言及し、有能なら人種性別などを問わないような言い方をしながら、主要人物の有能枠どころか脇役にすら身体障害者が存在せず、それらの具体的な能力発揮の困難さやコストや福祉など放置。

しかも、有能な善人は全員が若々しく美形で、努力をしない人間を批判しながら明らかに先天有能だけを礼賛している。

ディズニーと同じ病気。差別はやめようと言って属性を逆転させただけで差別で復讐してるという。

鉄道と煙草が重要な存在でありながら、それは資本主義を礼賛するだけで、そもそも横断鉄道は苦力やインディアンを犠牲にした結果だし、煙草もまた中南米とインディアンから搾取した結果であるという歴史を全く無視して、アメリカは1869年以降の姿を最初から持って生まれたような国として描写してるのには吐き気がした。

フランシスコやラグネルの生き様は過剰とはいえ理想像としてはわかる。ブルースウェイン過ぎて笑ってしまうが。

そこまで酷い作品ではない。しかし、550mm,1263p,1kg という物体と時間の負担を考えると、温故知新は無く、ただある時代の過剰さだけが浮き彫りになる普遍性は無い点で失望しか無かった。

リアーデンとダグニーのやりとりなんて重複してるんだから1回で良い。そこに無駄な尺を取らず、前述の資本主義の土台作りの罪悪や有能だと証明する機会が果たして平等なのかなど、そういう問題を書くべきであった。

扱ってる題材の量や深刻さに反して、ポジショントークの主張と描写の矛盾が酷すぎて、特に後半はもう真剣に読んでいられなかった。

キリスト教を批判しながら、本作の重要人物はイエスとやってる事が同じだと無自覚な愚行。

もっと当時から未来を見据えた作品かと期待してたのが、ある時代のプロパガンダに過ぎなかった。

エディアカラ紀・カンブリア紀の生物

エディアカラ紀・カンブリア紀の生物

漠然と、今まで有史以後しか興味を持たずに読んでこなかったなと、オカルトやSF的な発想も含めて原始の断片を知るために。

そもそも、カンブリアの言葉は既知だが、エディアカラは未知で概念を知る意味でも。

奇想、天を動かす - 消費税から始まる殺人事件

奇想、天を動かす

MMT関連もあり、消費税により人生が破綻した何か具体例や発想が無いかと探していたら、本書を見つけた。

シリーズらしいが単独で楽しめた。

ただし、消費税は装飾で、作品の題材は戦中,戦後の日本の腐敗であり、韓国人とサハリンの問題。

ミステリのつまらなさは犯人が誰か問題だが、最初から謎を手段と動機と断片の集積に徹底しているので、退屈せずに読めた。

また、現実にはありえない幻想的な状況も、京極夏彦ほどに誇張せず、客観的な現象と主観的な印象の齟齬を区別しながら混合してしまう展開は素晴らしい。

まんが訳 酒呑童子絵巻

まんが訳 酒呑童子絵巻

江戸時代の浮世絵にも言えるが、深刻に描いてるのが冗談に見えたり、冗談の描写が深刻に見えたり、時代の隔たりを感じた。

妖怪だと見破られた女が男を追いかけるとこなんて、すげえ楽しそうに見えて笑ってしまった。

ある英雄に仮託して仏教の権威を強める目的があったのね。

鳥玄坊 - 明石散人 - 平行世界の統一的な混乱の面白い描写

鳥玄坊

日本の偽書や現存しない書籍/情報を含めて全て事実だったらどうなるかと言う小説。

八岐大蛇がただ大きいだけで名前と性質の関連が無い大怪獣なのは残念。

用語の多い大長編ドラえもん。

登場人物の設定はともかく、言動が萌えアニメやラノヴェみたいで気持ち悪い。

女の美女や性的な描写が過剰。

ヒロインがノーパンだった理由のように、根拠と目的が一致した行動なら笑えるし展開にも寄与している。

日本文化と宇宙的な歴史。双亡亭壊すべしが近い。

3重交点で世界を支配している日本と言う設定はSF的には面白いが、大国に寄生しないと生きていけない現実とあまりに乖離していて絵空事とは言え虚しい。

平行している時間を自覚または無自覚に交錯するとどうなるのか。ウォッチメンのDrマンハッタンやArrivalと異なり、1本の時間を前後交錯するのではなく、平行の時間が1本の経験になる描写は面白かった。

ダーク・ジェントリーの催眠術にも言えるが、漫画や映像など視認出来ると読者や観客の主観から現象を確認出来るので、演出として違和感がある場面にしてるのだな、とわかるが、文字だけだと前提と結果がわからないまま断片を追っていくだけなので、こういった状況の混乱が、読者の混乱と直結していて全くの他人事なのに疑似体験が出来て面白い 。

ただし、やりたい事がわかったので、3部作だが1だけで満足した。一応2と3も軽く読んだが、設定を見せた段階で終わってるような作品なので、3冊で盛り上がる事が自分には無かった。

漫画ベルセルクは古今東西南北の神話を1本の漫画にまとめてしまおうと言う野心作になったが、あれに地球描写に笑った感覚に近い。

L'INCAL アンカル - やっと読んだ

L'INCAL アンカル (ShoPro Books)

肩をすくめるアトラス同様にずっと読みたかった作品だが、読むのが遅過ぎた。

これの子孫をあまりに知り過ぎて、発見よりも既視感が強く、資料としての感慨しかなく読者としての感動を得られ無かった。

突飛な異世界旅行としては楽しかった。

しかし、もはや光と闇などに喜べるほど自分が若くないと思い知った。

藤子F不二雄 SF短編集 メフィスト惨歌

藤子F不二雄 SF短編集 メフィスト惨歌

自分は2冊しか読んでない藤子F不二雄のSF短編。

何冊あるのか知らないが、本書を知らなかったので。

魂と大金の取引に加え、ある女も景品にしろと言う要求の根拠が、人体の物質が時価1万円に過ぎないと言うのは面白い。しかも、作中の展開で人間の価値は死ぬまでの功績で逆算して決まると、価値基準の時間的な制約にもちゃんと触れている。

母の記憶に - アメリカが本当に移民のための国であったらという理想

母の記憶に (ケン・リュウ短篇傑作集3)

個人的には、ケン・リュウはこれこそ収穫だった。

揚州の虐殺と西遊記。

Mother2のプーの修行は、目指した意味に対して安全がわかってる故の装飾的な演出に終わってしまったが、志のために肉体を失っていく恐ろしさはまさしくこれ。

1860年代の金鉱と大陸横断鉄道の苦力と、関羽伝説の融合。

アイルランド移民と支那移民が仲良かったらという幻想。

自分の苦力知識は日米衝突の根源に依拠するが、設定や展開の確認に思わず引っ張り出してしまった。

紙の動物園 - 勝利が招く損害と、損失を避けられない楽観。

紙の動物園 (ケン・リュウ短篇傑作集1)

全体的に母と移民の感傷が多く、かつSF的な設定や状況は装飾に終わってるのが残念。

良かったのは3点。

太平方横断地下鉄と、文字占いと、結縄。

太平方横断地下鉄。日本がWW2に勝利した世界。しかし、当然ながら現実と同じく差別や労働の問題はあり、台湾にとっての損得。セデック・バレを想起した。

文字占い。題材もだが描写が重すぎる。しかし、これが無ければ自分には感傷的で流すだけで終わってた。これを読めただけで本書は収穫だった。

戦争の内実や、戦後の矛盾など、善意による破壊や、次世代に対する楽観的で傲慢な先送り、あるいは早計な勘違い。

彼の作品は、ちょくちょく日本勝利の戦後が描かれるが、当然ながらどこが勝とうと楽園など不可能であり、多くの問題を抱えた現実があるだけ。

結縄。次本でも1869前後の移民を書いた作品があるが、本書に収録の結縄は時代設定が異なるも、アメリカの大陸横断鉄道後の資本主義の理想像を書いた肩をすくめるアトラスとの対比だと感じた。

当然だが、本書は資本主義の罪を描いている。