紙の動物園 (ケン・リュウ短篇傑作集1)
全体的に母と移民の感傷が多く、かつSF的な設定や状況は装飾に終わってるのが残念。
良かったのは3点。
太平方横断地下鉄と、文字占いと、結縄。
太平方横断地下鉄。日本がWW2に勝利した世界。しかし、当然ながら現実と同じく差別や労働の問題はあり、台湾にとっての損得。セデック・バレを想起した。
文字占い。題材もだが描写が重すぎる。しかし、これが無ければ自分には感傷的で流すだけで終わってた。これを読めただけで本書は収穫だった。
戦争の内実や、戦後の矛盾など、善意による破壊や、次世代に対する楽観的で傲慢な先送り、あるいは早計な勘違い。
彼の作品は、ちょくちょく日本勝利の戦後が描かれるが、当然ながらどこが勝とうと楽園など不可能であり、多くの問題を抱えた現実があるだけ。
結縄。次本でも1869前後の移民を書いた作品があるが、本書に収録の結縄は時代設定が異なるも、アメリカの大陸横断鉄道後の資本主義の理想像を書いた肩をすくめるアトラスとの対比だと感じた。
当然だが、本書は資本主義の罪を描いている。