順不同。順位ではなく基本的にA-Z。1部分野や作者でまとめている。
また、出版は2020年に限らない。あくまで自分が読んだ時期が2020年だったというだけ。
- しあわせの理由
- ずっとやりたかったことを、やりなさい。
- なぜ柳家さん喬は柳家喬太郎の師匠なのか?
- アダムスファミリー全集
- アメリカ民主党の崩壊 2001-2020
- サイゼリヤ おいしいから売れるのではない 売れているのがおいしい料理だ
- ザ・ペンシルパーフェクト
- タバコの世界史
- テクノロジーは貧困を救わない
- データでわかる2030年 地球のすがた
- フレーミング「自分の経済学」で幸福を切りとる
- ホロコースト産業
- 内沼映二が語るレコーディング・エンジニア史 スタジオと録音技術の進化50年史
- 変身
- 奇術師
- 子どもは40000回質問する
- 平和主義は貧困への道
- 我、自閉症に生まれて
- 教育は何を評価してきたのか
- 日本マンガ事件史
- 日本和声
- 日本国憲法の日本語文法
- 母の記憶にと紙の動物園
- 火星の人類学者
- 目黒の手話
- 絶対音感
- 自閉症は漢方でよくなる
- 21世紀の落語史
- KGBスパイ式記憶術
- PCエンジン コンプリートガイド デラックス
しあわせの理由
SF小説。特に表題作が素晴らしい。脳を自由自在に出来るようになった時、価値観が自由自在になった時、例えば美女を醜悪と思い込めたり、ゴミを宝物と思い込めるようになった時、人類や人生はどうなってしまうのか。
本作の結末には全く同意する。現在のディオゲネスとも言える。
もしも飢えや寒さが苦にならないのなら、自分も本書の結末に近い事を選ぶだろう。
ずっとやりたかったことを、やりなさい。
モーニングページの提唱者。朝(時間は任意)起きたらまず最初にやるべき事は、A4ノートに3頁、その時間に思いついた事を全て書く。
予定でも良いし、願望でも良いし、不満でも良いし、絵でも良いし、書く事が無ければ「書く事が無い」と書き続ける。独学大全のメタノートに近い。
肝心なのは内容や意味ではなく自覚である。仮に犯罪に関する内容でも、それは計画ではなく願望に過ぎない。それらを自覚し、また、30分から1時間ひたすら思考するのに慣れる訓練でもあり、考える、書く、自覚し、可能なら実行する。
以上の4点を呼吸やまばたきくらい日常にするための方法。
なぜ柳家さん喬は柳家喬太郎の師匠なのか?
既に成人して久しい人間同士が血縁に並ぶ人間関係を意図して作るとはどういう事なのか。
話が変わるが、界隈で有名な金原亭乃ゝ香は昨年11月に2つ目に昇進した。普通は、それを売名にとことん利用するのに、彼女は2019年3月でTwitterの更新が止まっており、ある程度の独立を示す立場になった事すら宣伝しない。それでいて寄席やネタはおこたらない。これは彼女個人の方法であり落語的に一般的とは言えないが、美女や若さを全く売りにしない歪んだ健全さを含んでいる分野であるのは間違いない。
本書に話を戻すと、基本的に未熟を許さず熟練が肯定される分野であり、それは当たり前の事なのに、特に日本ではアイドルや萌えなど、とにかく幼稚である事が望まれる。もっとも、彼女らは苦労して「出来ないふり」をするという、あれはあれで実に歪んだ商売であるが、伝統芸能という分野が、長期に渡り日本の基本的な価値観に反抗しているのは面白い。
そして、熟練の粋に達した時に当人が感じるのは老いによる衰退という皮肉。ある意味では血縁よりも強い人間関係を維持しようとする覚悟。自分が落語を好きな理由は1つでは無いが、その1つに覚悟と挑戦が含まれるのだろう。
ちなみに、個人的に好きな落語は3つある。それが立川生志 柳田格之進、柳家さん喬 弱法師、柳家喬太郎 孫、帰る。
アダムスファミリー全集
2020年9月に再アニメ化されたキービジュアルを見て違和感があった。
あれ妻が中心になってる。おいおいポリコレか? いや待てよ、自分は1990年代の映画が中心で原作を未読だわ……という事で読んだ。結論としては、自分が間違っていた。本作は古典的な価値観を維持しながら、それぞれに突飛な要素を厭わず、様式と逸脱の対立ではなく両立を目指した作品であり、その意味でポリコレに甘んじたのではなかった。
ちなみに、自分が何度やってもぶれないINTJの代表にWednesday Addamsがいる。
アメリカ民主党の崩壊 2001-2020
渡辺惣樹の著書。本書の中でトランプ圧勝が予言されているが、その根拠は共和党と民主党の2期入れ違いではなく、それなりの中身を含むものと説明されている。
圧勝の予言自体は外れそうだが、民主党の妥協を許さない新自由主義と個人主義が招くのは2大政党制の崩壊である、この点は同意するし、そしてトランプ2期を待たずにそれを迎えているようである。
また民主党や共和党と区切るのではなく、ネオコンか否か、それこそがアメリカを中心に考えた場合の有益有害につながる。1990年代のクリントン政権におけるホロコースト産業などもそれに当たる。
ホロコースト産業
ホロコーストは事実である。
しかし、その内訳の真偽は別問題であり、被害者産業を成り立たせたのは何か?という本。 ユダヤ人の起源と同じくユダヤ人による内部告発である。アメリカが中心となったユダヤがドイツやスイスに賠償を求めながら、インディアンなどの先住民族への賠償はいまだ充分になされていない、など、そもそもユダヤ人とはユダヤ教徒であり、戦勝国の中ですら差別はあったし、そして戦後ユダヤ人はホロコースト産業などに便乗する人種、というよりも統計的に絶対的に発生する犯罪者や悪人、ユダヤ人もその事実からは逃れられないという事を証明したに過ぎない。
例えば、日本は世界的に見て平和で安全で愛想も良い。しかし、それは優しいとか有能だからではない。自衛のためにつぶさに監視し便乗してるに過ぎない。
攻殻機動隊という漫画がある。その中で以下のような描写がある。
ロボットは好意で微笑むのではなくプログラムで笑う。最近は人間もそう。
日本の平和と安全は、これで維持されている。それ自体を絶対悪とは言わないし思わないが、それと同根で異なる発露がホロコースト産業であり、あるいは決断と実行が一切なされない現在の武漢ウィルスや経済政策である。
ところで、ワンダーウーマンで有名なGal Gadotはイスラエル人である。彼女は兵役をこなし、精神的にも肉体的にも自立しながら、子持ちで幸せな結婚生活を迎えつつ、そんなの構わない美貌も維持しているという神から愛された女の1人であるが、2020年のふとした時にこれを公開した。Gal GadotとBill Clintonの2ショットである。
サイゼリヤ おいしいから売れるのではない 売れているのがおいしい料理だ
サイゼリヤの創業者が書いた本で、題名が全ての本。
しかし、安易な売り上げ至上主義では無い。仮に上位でも不本意な売り上げもあり、願望は願望として自覚した上で否定せず、しかし統計的な分析を踏まえて願望との誤差を自覚して実行する、コストカットとは従業員の士気まで含めた行動であり従業員に反発されない項目と経営の両立を目指すのがコストカットである、などなど成功者の成功例として綺麗でありながら実用的という恐ろしい本。
論理と感情は矛盾しなければ対立もしない。そうるのはいずれも未熟だからに過ぎない。
ザ・ペンシルパーフェクト
鉛筆の歴史をまとめた本。
自分は楽譜や図画で鉛筆を使うので、その延長で読んだ。自分はこれまで三菱鉛筆のハイユニを使って来たが、やわらかく大量カスが不満だった。本書で今更に同価格帯のMONO 100を知って、そちらに乗り換えたが、少なくとも自分にはそちらのほうがあっていた。
アメリカにおいて鉛筆を作成技術が応用されて造幣を担った人物や時代もあった、というのは、また本書の別枠で示されてる通り安価で素晴らしい文房具が揃っている日本の日本円の信頼に通じるものがあると面白かった。MMTによる経済策が可能な国の1つであるのが日本であるというのも納得がいく。
本書では鉛筆の噛み心地なども書かれていて笑った。
タバコの世界史
煙草は嫌いである。
しかし、脳に作用する以上は程度を踏まえて何がどう有効なのかは自覚せねばならない。例えばニコチン 病気でググっても禁煙に関する情報ばかりが表示されて、ニコチンが他の病気治療に有効な場合がある事実が無視されている。
また、そもそも何故インディアンなどが煙草を好んだのか。煙草は空腹を紛らわす。生産される食料の1/3を廃棄してる現代においてそれは有害だが、狩猟が有効な民族において獲物の数や空腹の管理は重要であり煙草が有効だった。といった事が語られず、いたずらに百害あって壱利無しの盲信もまた誤解である………という動機から読んだ。
自分は煙草と言えばインディアンだが、本書では中南米のインカ、マヤ、アステカなどメソアメリカ文明で語られる。煙草は女神の化身であり女は(妊娠に有害なので無意識に)吸わない。万能薬であり歯痛には葉などを直接塗り込んで治療した。
テクノロジーは貧困を救わない
著者が2004年から10年間、インドの地方でITを中心に教育と経済活性を目指した結果の挫折と理想を書いた本。
題名通りで、結局は文字の読み書き、そして子供(生徒)の能力に合わせた対応が可能な有能や教師と体制、これが教育の全てである。
例えば、ある田舎の民族は、教材映像に登場する人物の肌色や方言が違うという理由で教材を拒否した。また、教育水準の高い女は結婚の持参金が高くなるので親が教育を拒否した、などなど当人のやる気とは異なる現実問題が山積している。無論、パソコンを導入したところで、湿気や気温などパソコンに不適切な環境でどのように維持するか、そのコストをどうするのかなど。
教育格差はどこの国にもあり、それは人類共通の課題だが、それだけに独占を意図する知的経済上層が存在しており、結局は理不尽で不平等を自覚しながら下層がいたずらに辛苦を負わずにすむ意図した平等というのは、人類が望みながら人類が拒否している多様性の代償であり、解決が可能なのか不明。
紛争でしたら八田までという漫画がある。これは地政学を題材にした蘊蓄漫画でインドも扱われた。
インドの話では経済や教育や宗教などの格差や、糞尿処理の過酷さなど、この漫画は極めて真面目な描写と内容だが、作中で紹介される本や情報を、本作とは無関係に事前に読んでる類の自分には物足りなかった。
逆に、先に示したテクノロジーは貧困を救わないや、次に示すデータでわかる2030年 地球のすがたなどを読まないような読者には、まず入り口として紛争でしたら八田までが最適ではなかろうか。
作中の女はツリタレを問わずちゃんと美少女だし、登場人物の顔も事実上1種類の萌え同一人物ではなく、人種や性別や世代に配慮した描きわけもされている。
データでわかる2030年 地球のすがた
これを書いてる時点で読み終わっていない。
1度、図書館で借りて読んで、情報量と編集方針から辞書の類と同じ用途の本であるとわかり、購入してから項目別にちらちらと読んでいる。
例えば、この記事でも食料1/3廃棄問題について言及したが、持て余してるのに2050年には食料不足が予想されている。
その理由は、アメリカとITを中心とした貿易の結果、先進国が増えて、先進国であるほど食肉の消費が激しく、穀物と異なり生産場の面積あたりの生産量が追いつかなくなるから。
先に紹介した紛争でしたら八田まででも2050年の食料危機は紹介されているし、本書は2030年という題名に反して、それに限らない時代の数字もおさえている。
フレーミング「自分の経済学」で幸福を切りとる
2020年は何かと自閉症に関する情報に触れる機会が多かった。半分は意図で、半分は偶然。本書は後者である。
フレーミングとは偏見であり、例えば90%の確率で生き残れるのと100人に10人は死ぬのを同等と判断出来ない事を指す。
あるいは、結果や結論だけを考えたら最善なのに、行動や過程を横着して最善の結果や結論を選ばない、など。富国と強兵でも大きく扱われる経路依存にも通じる。
本作が愉快な点は、自閉症を経済的に応用してる点。
自閉症に治療が必要なのと同様に、健常者も自閉症に見られる特殊能力や判断基準を学ぶべきだろうという主張。常識や規則というのは必要であり有効だ。言葉という概念の延長でそれらが世代をまたいで当事者の死後にも有効であるからこその文化や文明なのだから。
それを無自覚、無頓着に甘んじるのは許されない。男は女を馬鹿にするものだし、女は男を馬鹿にするものだ。
それで良いのだ。
問題なのは、それだけを基準に強制や禁止を設ける事に他ならない。自己肯定の延長で自分以外を格下と判断するのと、自己保身のために自分以外の行動を阻害するのは全く異なり、そして後者こそが差別や独裁などに通じるものである。
もっとも、差別はともかく独裁が絶対悪かどうかは議論の余地があるが。
昨年末に世界で最も美しい顔Top100に何故ポルノ女優がいないのか?を書いた。美醜の差別もまた根深いが、仮に美女という枠の中でも職業差別が存在する。根本的に人類の多数派は多様性など求めていない。あるいは少数派すら目的は多様性ではなく自己保身である。
ただし、本書が示す点に自分は同意する。つまり、多数派は少数派を無視するが、少数派は多数派を思い知り理解する。
「悪は善のことを知っている。しかし、善は悪のことを知らない。」カフカ。
この引用だとまるで少数派が悪になってしまうが、本質は無意識を自覚し改めよ。それである。
内沼映二が語るレコーディング・エンジニア史 スタジオと録音技術の進化50年史
内沼映二。70歳をこえて現役のミキサエンジニア。
彼が半ば遺書めいて書いた本。
いたずらに彼を持ち上げる関係者の発言が余計だが、彼自身の経験や意見は明らかに有益。
分野は異なれどサイゼリヤ おいしいから売れるのではない 売れているのがおいしい料理だと論旨は同じ。
すなわち、好き嫌いの理想を持つのは当然で、その上で科学的、客観的な数字や計算を活用して理想を実現しろ。
本書では、彼が使ってる機材の具体的な型番と使う意図が紹介されている。基本的な音量と周波数の関係や原理なども数字で示される。マイクなどの配置は俯瞰図で示されていたり、その点で正にエンジニアである。
演歌歌手の石川さゆりがゲストで寄稿しているが、彼女の愛用のヘッドフォンはSennheiser HD 560 Ovation II(1991)という廃番の骨董品で、それを語ってるのが面白かった。たしか田中公平との付き合いが長いミキサエンジニアの吉田俊之の愛用品もまたこれだったと記憶してる。
変身
カフカ童貞をこれに捧げた。もともとはカフカの著作というよりも名言から入ったのだが自分を傷つけたり、刺したりするような本だけを読むべきだと思う。
を別の言葉で知り、それがカフカの名言という事で興味を持って読んだ。
何と言うか、幸福に負い目がある、あるいは無頓着な人間に疑問がある人種にぶっ刺さるのはよくわかる。極端に1属性を礼賛も批判もせず不条理と現実のしたたさを描いてる。
これを生涯の本にするのは流石にこじらせ過ぎだと思うが、こういったものが週刊少年ジャンプほどに常識化していないのもまた疑問である。
奇術師
ノーランの映画版プレステージとの差異を知りたくて読んだ。
設定が同じだが立場も題材も結果もまるで違う。自分は映画から入った人間なので、この違いはむしろ客層を広げたという認識だが、原作から入ったら明らかにノーラン節のために素材にされたと怒るのもわかるという感じ。
原作の登場人物は超自然的な設定に反して人格は凡人ばかり。職業上の以上な執着や生き様は原作で既に書かれているので、ノーランは人情ではなくその覚悟や逸脱こそを焦点に映画にしたという感じ。
原作も割と悲劇的な作品ではあるが、それでも含みを持たせたロマンで終えている。
個人的にあえて軍配をあげれば映画。入り口だったというのもあるが、扱われてる問題の深刻さが桁違い。原作はあくまで愉快なミステリ,サスペンスに甘んじてる。
子どもは40000回質問する
子供が指さした事に親がどう反応するかで子供の人生は変わる。指したものを貰えるのか、指したものを教えられるのか、などなど。
無論、人生とは1要素で決定するようなものではない。しかし、親も教師も子供時代を過大評価する割に、子供時間を過小評価している。1秒1分1時間は我々と子供では主観的に桁違いに異なるのだ。
本書の場合はピノキオよろしく子供の質問という形で教育問題を書いている。
平和主義は貧困への道
三橋貴明の動画に佐藤健志がゲスト出演した動画を見て、論旨が興味深かった。
すなわち、財務省の増税は権威を含んだ行動ではあるが、目的は他にあり、しかもそれは経済的な動機ですらない、というもの。
動画を見た上で本書を読んだ。
結論としては、敗戦国として経済的な自立により起こり得る再びの武装と戦争を許さないため。
これ自体もまた集合の1部に過ぎないとは思うが、自分には、この観点自体が全く無かったので面白かった。
我、自閉症に生まれて
自閉症の社会的成功者として、また自閉症が一般人に理解できる体裁で本を買いた著者として有名なテンプル・グランディンの著書。
自分が読んだ動機は以下の通り。
自分は自閉症ではなく、発作などは無いが光や音に過敏で日常的にイヤーマフも利用している。
その延長で体にかける毛布を重くすると不眠症が改善するかもしれないという記事を見かけた。自分が冬場の布団を快適だと思うのは、あくまで気温,体温の問題だと考えていたが、布団の重さという観点を考えた事がなく、7kgの加重布団を試した結果、明らかに自分には有効であり、更に、この方法は1990年代に既にテンプル・グランディンが提唱していた、と知って彼女に興味を持って読んだ。
感想としては、彼女よりも彼女の母親が凄い。
既に自閉症テンプル・グランディンの母親の日記から何を学べるかで書いたが、本書で引用されてる母親の日記が凄まじい。
20年以上前の日記が成人し成功した彼女の著書で引用できるような体裁で残っており、かつ内容もまた凄い。
19歳でテンプルを初めての子供として産んだ母親。間も無く自閉症とわかり苦悩する。自閉症ゆえに手に負えないという事をはっきりと認めている。
しかし、自閉症故の癇癪なのか、テンプルが子供として自然な反抗を見せた結果なのか、母親はしっかりと区別している。
前者の場合には、テンプルは反省から自分で泣きながら掃除をしたり、テンプルなりの善悪の判断基準があり、親からのそれら発言や価値観もちゃんとわかっていると書いている。その上で、ただでさえ困難な子育てが自閉症との乗算で手に負えず困難であると。
自分は、以上のような日記引用を読んで、感動を超越してどう反応すれば良いかわからなかった。
いたずらに子供を過大評価せず、また虐待や拒絶もせず、専門家の助言を厭わず、それでいて盲信しない知性と覚悟と行動。
本書ではテンプル自身が、自身の幸福は母親(と何人かの助力者)にあると結論を書いてるが、そらこれほどの母親に育てられたら子供としては幸福としか言いようがないだろう。
テンプル自身の願望もあり、自閉症は全員が全員または才能がある、みたいな記述があり、それは甚だ疑問ではあるが、少なくとも彼女という結果を出した親や関係者の偉業は事実であり、何の異論も無い。
教育は何を評価してきたのか
単なるゆとり批判ではなく、戦前から現在までの変化を示している。
教育を扱う本での結論は、内容の是非を問わず同じであり、本書もまた共通する。
テクノロジーは貧困を救わないでも書いたが、子供(生徒)の能力に合わせた柔軟な対応が可能な教師と体制が教育の全てである。
暗記が得意なら、それを応用すれば良いし、肉体労働が得意なら、それを応用すれば良い。
問題は複数あり、政治家や企業などの上層は奴隷を求めてる。消費者は安価が労働に反映されるのに無頓着。親や教師など教育に無能な人間がその立場にある。などなど。
日本マンガ事件史
戦前から現代までを扱ってる。また、一部はアメコミなど海外作品にも言及されている。作品や作者は既知だが出来事は未知だった事も多く、あるいは忘れていたけどあったあったと思い出すような事もあった。
本書自体が2020年と新しく、古典的な内容ながら中身が古くなってないのも素晴らしい。
日本和声
日本の音階はヨナ抜きなどが有名だが、これを旋律だけじゃなく、西洋音楽の和声理論のようにスケールとコード(堆積和音と転回)で羅列して、西洋音楽の音楽理論の管理で、日本の和声をまとめている。
常時利用するような類の知識や本ではないが、非常に見やすく便利。
日本国憲法の日本語文法
日本国憲法には興味がある。しかし何故に読みづらく興味を維持できないのか。
それを考えていたら、文法という観点で分析と解説してる本があったので読んだ。
結論として、自分が何故読みづらいかは以下の理由だった。主語に使う格助詞を主語を書かずに目的語に使い、目的語を主語の如く書いてるから
。
母の記憶にと紙の動物園
ケン・リュウにSF小説。
1人の著者で複数冊の枠を取るのも何なので、2冊で1枠とした。
既に感想は簡単に母の記憶に - アメリカが本当に移民のための国であったらという理想や紙の動物園 - 勝利が招く損害と、損失を避けられない楽観に書いたので、ここでは詳述しないが、伝統のありがたい幼稚さ、あるいは現在の無邪気な破壊など、ある側面だけでは断定できない要素をいたずらに礼賛せず物語として綺麗ながら悲観的に描いてる。
火星の人類学者
自閉症や病気による脳障害などを題材に、実在の人物との交流を書いた本。テンプル・グランディンもその1人して書いてあり、その延長で読んだ。
ある時期以降の出来事を全く記憶出来ず、陽気さだけが人格に残り幸せそうに見えるのに、家族の訃報を知らされると、その訃報は間も無く忘れ去っているのに、意味不明の喪失感から寝られなくなった話など、そういう類の事が扱われている。
先天の盲目が成人後に手術で視力を回復したところで、それは生まれた頃から視覚健常者と同じようには見えないし行動もできないのに、もはや健常者として扱われ、あるいは目の悪さをからかわれるようにすらなり、むしろ不幸が増長したなど。
基本的には不幸話を売りにした本では無い。あくまで未知の要素を現段階でどう認知するのか、といった本であるが、無邪気または意図した差別をする人間ほどこういった本を読まずに差別が増長する現実を見るに、どうしたって悲観的になる。
目黒の手話
目黒の地名や施設の名前をまとめた手話の本。凄く面白くて23区分があるのかと探したら、少なくとも自分にはこれしか見つけられなかった。
祐天寺という手話は、本書を出版した目黒区の手話関係者の創作らしい。
少し前に声の形という漫画とアニメがヒットしたが、それに感動したという消費者のどの程度が手話を現実の言語として認知、学習したのだろうか?
感動とは、感じて動く事。つまり、勧善懲悪に感動したらポイ捨てや自転車の駐輪禁止を守るなど、そういう事をまっとうするのが消費者の務めではないか?
かたわ少女ではないが、自分は身体障害を一種の萌えとして認知してる傾向がある。
別に同情のや優越感の類ではなく、車椅子を使う人間は車椅子を好き嫌いではなく必要だから使うのであり、その必要な中でどんな苦労や工夫があるのか……など。
手話は、限られた状況ながら発声せずに使える非言語情報として極めて有効だ。手話の有益性には難聴も健常も関係ない。パラリンピックがオリンピックよりも面白い理由がそこにある。
もはや、身体障害者は健常者に勝るような逆転現象が起きている。それは充分に補助されているという特権に限るのもまた事実だが。
テンプルグランディンの母親ではないが、身体障害を過剰反応せずに右利きと左利きの不便さ程度のものとして日常的に扱われる時代を人類は迎えられるのだろうか?
絶対音感
絶対音感を持つ持たない人人からの実体験や逸話をまとめた本。
簡単な感想は武満徹の絶対音感に書いた。
自閉症は漢方でよくなる
自分は自閉症ではないが、彼らに使う習慣や道具が有効な事が多いので、その延長で読んだ。
本書はずばり大柴胡湯を推奨しているが、他に自閉症の状態に関して興味深い事が書かれていた。
彼らの過剰反応または無反応は脳の緊張によってもたらされる。そして、自閉症でなくとも寝付きが悪かったり生活に支障をきたす類も同様で、過剰な反応、過剰な思考による緊張であると。
なるほど。自分は無個性なThe INTJとして生きてきたが、その日の愉快不愉快に関わらず寝付きが悪く4時間程度で目覚めてしまうような事の説明には符号する。
つまり、こういった記事を書く、または考えるのが常態である程度には、思考が過剰なのだ。
自閉症は胃腸の弱さにも関連していて、自分は拒食症ではないが少食で油にも弱く、味や栄養や精神の好みではない体質の問題で、3日に1回くらいは吐く。大柴胡湯はもともと自閉症ではなく胃腸の対策であり、その延長で自閉症にも有効らしい。
自分は自閉症でもなく拒食症でもないが、それでいてINTJやら胃腸が弱いやら体重55kgやら、場合によっては病気と判断されるような要素を幾つも抱えている。それを病気だと思われない程度で済んでるが良いのか悪いのかは不明。
21世紀の落語史
名実ともに古今亭志ん朝が支配していた落語界。彼が死んだ事により中央政権が崩壊して地方自治が強くなった。というのが論旨。
作者は少なくとも表向き落語全肯定の立場であり、芸風や売り上げを問わずに色々と拾い上げているのが素晴らしい。
KGBスパイ式記憶術
半分は小説の体裁をした記憶術の本。
記憶力というもにどれだけの人生をかけるかで本書の価値は異なる。
自分にとってはシュルテ・テーブルが有益だった。
自分は、例えば何回も会ってる人名を数ヶ月たっても暗記できないのに、1度見た車の番号は暗記する意欲さえあれば1度で暗記できる(同時に複数台は無理)。駐車場にある白い車の台数を数えておぼえたり、そういうのは半ば習性としてこなしてきたので、本書の考えたかたは理解できる反面、本書ほどに必死に継続できるかは疑問。
PCエンジン コンプリートガイド デラックス
PCエンジン(PCE)のソフトをまとめた本。
自分は当時、知識と金銭の限界から任天堂ハードしか知らず持っていなかった。
PCEが時代遅れとなった頃に後追いでPCEに手を出して、アルナムの牙、悪魔城ドラキュラX、くにおくん大運動会、などを中心によく遊んでいた。
本書は単純なデータベースに過ぎないが、フルカラーでソフトの画像もあり、簡単な評価は扱いも解説されており、懐古としても、単純なデータベースとしても面白かった。
以上の30冊が、2020年に良かった読んだ本である。
これを書くのに6時間ほどをかけたが、読書と執筆の玄人は、内容の是非はともかく、この程度の量をどの程度の時間で完了するのか、私、気になります。
今年はブルーライトカット眼鏡を採用して電子書籍にも物理的抵抗が無くなったので、これまで紙で入手困難だった類に手を伸ばせるかもしれない。
自分は遅読なので、せめて月2冊程度は維持したいと考えている。