10 years ago today, we released Batman: Arkham Asylum. To everyone who ventured into the Asylum with us, thank you for Being the Batman. pic.twitter.com/3eZDCVS9Rk
— Rocksteady Studios (@RocksteadyGames) August 25, 2019
【目次】
Arkham Asylum に至る道程
発売の前年、2008年。バットマン界隈では、界隈に収まらない凄まじい程の祭りとなっていた。
そう、ダークナイトである。
映画ファンはダークナイトだけを評価するが、バットマンのファンからすると、前作のバットマン/ビギンズ(2005年)の時点で、まさかバットマンがファンにはおなじみの問題から映画で復活するとは思っていなかったし、しかも面白いので肯定が多数派だった。
少なくとも続編が作られる程度に成功した。
BATMAN HUSHとBEGINS
自分がバットマン/ビギンズを知ったのは本屋だった。無目的に本屋をふらふらしていた所、新刊の山にBATMAN HUSHが置いてあった。
アメリカでは2002年に連載。
日本では2004年に単行本が出た本作。
これを見た時の衝撃。
当時、2004年程度でも日本のアメコミは信者だけの娯楽だった。
一般的にバットマンのマークやキャラは既知でも、ロビンは1人だけじゃないとか、銃を使わない設定が定着した反動で使う話もあるが大概酷い出来とか、バットマンという名前が出てもそういう話題にはならなかった。
しかも、後述するビデオゲーム界隈ではカプコンのマーヴェルが主流であり、DCの設定を話せるほどに広がる商品が日本には無かった。
また、当時はiPhoneが存在せず、携帯電話のインターネットは限られた手段で、日常的に毎秒タイムラインから情報を入手するような手段に乏しく、海外商品の情報にも幾らか時差があった。
だから自分は当時BATMAN HUSHを本屋で知ったのだが、描いてるのはジム・リー(Jim Lee)だとある。
思わず本屋で声をあげるほど驚いて興奮した。
ジム・リー(Jim Lee)は1991年のX-MENでアメコミ界の神となった作家。
日本でも1995年前後にカプコンのゲームと並行して翻訳も発売されていた。
TMNTやX-MENやバットマンなど、夕方に日本のアニメの顔して放送もされていた。
るろうに剣心の作者がファンだと公言している影響もあり、日本の漫画読者にも幾らか有名にもなったジム・リー(Jim Lee)だが、アメコミの様式に辟易して独立。
しかし、アメコミヒーロー作品をやめると言うほど売れなくなり、何年かしてから、アメコミヒーロー作品に復帰した。
今では読む機会が無いが、処分する気もおきないX-MENとBATMAN HUSH
そういった事情を、WEBが今ほど発達していない中で趣味として情報の断片を入手してたので、ジム・リー(Jim Lee)の名前に驚き喜んだのだった。なにしろ検索方式がディレクトリかロボットか論争など、YahooやGooなど検索戦争から、ようやくGoogleが上場したような時代だ。
以上の理由から、迷わずBATMAN HUSHを購入して読んだら、単純にわかりやすく面白かった。
バットマンの歴史から見ると若造にあたるハッシュも、後年Arkham Knightでは中堅の顔して登場したのには笑ってしまった。
*全然アーカムシリーズの話にならないが、もう少し辛抱してほしい。
さて、BATMAN HUSHを読み終わってイイ気分なところで、改めて帯のバットマン/ビギンズを確認する。
すると、監督はメメントのノーランだと言うではないか。
まじか。
名作と言うほどの評価はしてなかったが、それでも映画の話題に挙げる程度には印象に残っていたし、箇所では今でも語れる程に素晴らしい点もある。
しかも、主演はLAコンフィデンシャルのガイピアーズにヒロインはERやThe West Wingで良い脇役だったジョージャフォックス。
洋画もアメリカドラマも好きな層にはたまらない配役である。
しかし、面白かったとは言え、出落ち映画の監督がなぜバットマンをやる事になったのか当時は知らなかったが、洋画的にもバットマン的にも興味を持ったのだった。
復帰
これは自分にとってもバットマン復帰作だった。と言うのも、自分がバットマンを好きだったのは1989年のバートン版と、それに準拠したTASとサンソフトのファミコン版である。
*余談だがサンソフトのグレムリン2も素晴らしい作品だ。
それ以降、個人的にはどうあれ、一般に浸透する程に爆発した作品は無かった。
ダークナイト
そこに、バットマン/ビギンズの成功と、そして今でも映画を中心に各分野に影響を残しているダークナイトである。歴史に残る作品とは思わず気軽に見に行った結果、えらい目を見た。
映画とアメコミと音楽(Hans Zimmer)という多層で衝撃をうけて、翌年超時空七夕ソニックの日まで話題の筆頭であった。
Hans Zimmerは映画音楽ファンとして当然既知だったが、何が好きかと言われたらピースメーカーくらいで、バックドラフト/ライオンキング/グラディエーターなどなど有名作品はあれど、ブラックレインやレインマンのようなシンセ曲と乖離が激しく、当時は自分も趣味と知識が分離した価値観だったので、彼個人の名前をあげるほどに好きだったわけではなかった。
と同時に日本でも深夜に放映されていたドラマHigh IncidentのOP曲が好きで、後になって彼の仕事だと気づいた時には嬉しくなったものだ。
管弦楽とシンセのミニマルの両立がついに結実したのがダークナイトだと思ったのは自分だけではないようで、ハンス・ジマーを語る。【WOWOWぷらすと】で添野知生が同様の事を言っている。
正直、無限音階でひたすら上昇するギターはホラーの古典的な手法で安易だと思ったのだけど、Dmの4つ打ちをメインテーマと言い張る豪胆さよ。
自分にとって、本作でついに手放しで彼を名前で買う価値がある作家となり、2016年には彼のライヴを見にフランスまで行ってきた。
なお、ピースメーカーの監督ミミレダーと主演ジョージクルーニはER出身で先述のジョージャフォックスと通じている。
バットマン/ビギンズの成功と、そして今でも映画を中心に各分野に影響を残しているダークナイト上映当時はIMAXを知らなかったので、普通の映画館で見たのが悔やまれる。
IRON MAN
ところで2008年にアイアンマンが公開されたが、ロバートダウニーJrだったのには驚いた。Ally Mcbealを好きで見ていたが、人気キャラだったのに麻薬を理由に降板して、彼は業界から干された。
その後にAlly Mcbealも低迷して打ち切り。
個人的にはあれを終わらせたのは彼だと思っているのだが、まさか大衆娯楽のド真ん中で復帰して、それが受け入れられ、名実ともに麻薬時代よりも素晴らしい結果を出して姿を見て、泣かずにいられようか。
映画のアイアンマン自体は言うほど好きではないのだが、ポッツの誕生日のくだりは最高だ。
Yeah. Isn't that strange?
It's the same day as last year.
出演者の話をすれば、ダークナイトの上映を待たずにヒースレジャーは急性薬物中毒で死んだ。
麻薬ではない。
2017年に出身地であるオーストラリア/パースで彼の展覧会があった。
自分はそれに行けなかったのだが、I Am Heath Ledgerを見た。
さて、以上の界隈と個人を踏まえてダークナイトの熱さめやらぬ中で、映画だけじゃない、ビデオゲームでもバットマンやべえぞ、という話を聞きつけ、そしてArkham Asylumに至るのである。
長かった。
Arkham Asylum
当時、少なくとも情報を得た時点では日本発売の予定はなく英語圏の販売だけだった。PS3は基本的にリージョンの問題も無いので海外版を購入。
ちなみに、自分は英語を出来ない。
しかし、先述のTASでバットマンとジョーカーを演じたケヴィンコンロイ(Kevin Conroy)とマークハミル(Mark Hamill)が主演で、脚本は同じくTASに参加していたポールディニ(Paul Dini)で人物や演技や物語には不安はなく購入。
仕事を始めてビデオゲームから離れて久しく、BDを見るために買ったPS3で当時最新の3Dビデオゲームをやったという事情もあり、単純に技術的な感動もあった。
3Dの8頭身で実写に近い画質できびきび縦横無尽に動くバットマン。
実は出来ない事も多くて、続編のArkham Cityでシリーズは完成するのだけど、オープンワールドではないにしろ、ほぼシームレスで次次に展開する物語と演出、X線のような任意で変更できるディテクティブモード、隠密と格闘を両立したゲーム性。
もう最高だった。
特にスケアクロウの充実っぷり。
ゴードンや両親の演出に、リアルタイム(裏読み)地形変化など、素直に感動した。
ビデオゲーム攻略とは無関係に鏤められたネタの数数。
自分でも拾いきれないくらいだった。
個人的には収容されてるクレイフェイスが面白かった。
発売から誰にも気づかれずに公式がネタバレした隠し部屋。
もちろん不満もあった。
バットモービルに乗れない。
滑空はあるけど基本的に飛べない。
バットウィングそれだけかい。
コンバットのコンボが難しい。
敵の銃が強すぎる。
ジョーカーなのにパワー落ち(あれはあれで元ネタがあるのだけど)。
等等。
しかし、バットマンと最新3Dビデオゲームがここまで融合してバットマンとは無関係に楽しめるほどに、それでいてバットマン要素が満載で、文句を言ったら罰当たりくらいの気持ちであった。
だが、それらファンの感謝を軽く飛び越える名作が出てきたのである。
そう、Arkham Cityである。
Arkham City
個人的にシリーズ最高傑作である。もちろんArkham Knightはシリーズ最大規模の作品で楽しんだが、前作の快適を失い、新要素がうまくいってない点もあり、相対評価はCityが最高。
ついに来た、自由自在な飛行。
もう最高。飛んでるだけで最高オレバットマンIm BATMAN(ガラガラ声で)。
しかも、その新要素をチュートリアル終わった瞬間にすぐ遊べる。
目的地を説明とキャラ萌えかねた演出で見せながら、オープンワールドなので別にどこに向かって飛んで誰をのしても良い。
更に、操作性が格段に向上している。
前作では難しかったコンバットも猶予が長く補正あり。
戦闘以外の謎ときで使うバットラングも画面中央を優先して照準補正。
ふらふら気ままに飛んでると突然ヴィランから声かけられてイベント発生するリアルタイムゴッサム感。
出てくるとは思わなかった、まさかのハッシュ登場。
オープンワールドなので前作Arkham Asylum程に派手な演出が出来なくなったなと思ってたら、根本的なシステム(操作)は何も変わっていないのに変化と高揚を招いた素晴らしいボス戦ラーズアルグール。
次から次へと出てくるヴィラン。
そして、今回は敵だけじゃなく味方も増えたセリーナとティム。
そういえばマッドハッターはAlly Mcbealに出演してたピーターマクニコル。
漫画バットマンの様式どんでん返しを深刻な物語と手が止まらないゲーム性にまとめた構成力。
まさしく名作。
Arkham Knight
問題のこれである。トレイラを見た時に、Cityを踏まえてこれならもう生涯の作品になる、ビデオゲームはこれだけ良いんじゃないかと思えた。
だがしかし…。
駄作ではない。
ついに実装されたバットモービル。
前作ではあくまで単体行動だった味方とのリアルタイム連繋ディックとティムとセリーナ。
細かく追加されたコンバットとプレデター要素。
そしてジェイソンにまつわる恐ろしく素晴らしい演出。
いい所は幾らでもある。
しかし、持て余した新要素バットモービル。
折角自由に走りまわりたいのに、すぐ行き止まりでギミック解除しろ。
楽しいのは最初の1回だけ戦車。
Arkham CityとArkham Knightの間に別スタジオで作られたアーカムオリジンズ並の微妙に劣化した操作性。
エイム精度が不要なゲーム性で補正されない照準武器。
ジョーカーの扱い自体は素晴らしいが、話を聞くためにプレイが止まる演出。
ああもったいない。
断片とは言え完璧にキリングジョークを映像化した恐ろしいイベント。
BATMAN: UNDER THE RED HOODとは異なり実際の打撃描写を一切見せずにジェイソンが味わった恐怖を垣間みる演出。
素晴らしい。これらは本当に素晴らしい。
でも、規模が大きくなった企画をまとめきれなかったな、というのが、率直な感想。
終わりに
以上である。バットマン自体1939年から続く、今年80歳のキャラである。
その一部であるアーカムシリーズ10周年だけでも、これだけ言いたい事があるのは、それだけの作品だったという事。
近年のアメコミ流行はダークナイトとアイアンマンから始まり、そこからバットマンに入った人や、今回のアーカムシリーズから入った人もいるだろう。
それぞれ思い入れる箇所は異なるも、特に日本という環境において作品についてぽんぽんと話が通じる人に向けて気軽に話せるようになったのは、いい時代になったものだ。
自分は、常に映画や漫画やゲームを追いかけているわけではないが、これからも続くだろうバットマンの一部が何かの機会に自分と重なる時もあるだろう。
それこそ、ノーランがやめた後のバットマン映画は色色とあれで、その反省からJOKERはまたフランチャイズを越えた作品に、少なくとも予告では気軽な娯楽作品のように仕上げたように見せていない。
これは見に行きたいと思う。
いずれまた、ビデオゲームでも名作のバットマンが見られたら嬉しい。