2020年10月11日日曜日

クリストファー・ノーランの対談が30頁ある「SF映画術」

もともとジェームズ・キャメロンの対談がアメリカのTV番組であり、その日本版の宣伝をかねた文字版がこれ。

自分が興味あったのはノーランだけだったので、他の人物の箇所はまだ読んでいないが、対談相手は以下。

  • スティーブン・スピルバーグ
  • ジョージ・ルーカス
  • クリストファー・ノーラン
  • ギレルモ・デル・トロ
  • リドリー・スコット
  • アーノルド・シュワルツネッガー
副題にジェームズキャメロンを含む6人の巨匠が語るとあり、帯には写真が無いが。シュワルツネガーが出演者側で唯一の対談相手。

写真はともかく、対談の文章頁すらフルカラーは金の無駄ではないか。

ただし、1人30頁前後と、量に関して不満は無い。

2001年はSF映画映画の基準だが、「自分のような金の無い映画監督には無理」ととにかく現物を作らせる人間の言うことかと。*もっとも、これは若い頃に感動した当時について語ってる事だが。

インターステラーのドッキングは2010年を参考にした。2001年の続編かつ別監督だから過小評価されているが、ノーランは肯定的。

「ポップコーン映画は需要があり作るのも好き」これ自体がどこまで本音か不明だが、TENETを見る限り、それを実行したと思う。

インセプションはiPodなどの、目的の曲を聞くのに何層もタップしなければならない不便なインターフェイスを参考にした。これを読んで、偶然にも最近読んだ佐藤大輔黙示の島を想起した。それは作品の主題ではないが、登場人物が地図とシャーペンを持ち歩く理由に、PDAを使わない理由は、自分の発想を、他人が考えた半強制的な規則に従いながら実行する不便さを嫌い、とあった。そこには自分も同意する。パソコンやiPadは自分に不可欠な道具だが、年々利用頻度は落ちて、紙と鉛筆(ボールペン)が先にある。発光、電源、重量など、これらのデジタル電子機器は原理的な問題を解決出来てない。

アーティストには無理で、計算/アルゴリズムでしか出来ない事がある。しかし、計算結果から是非を判断するのが人間なので、その曖昧が芸術でもあり、つまり両方を駆使する。計算も判断も人知である事に変わりない。

ダンケルクのインタビュウでもそうだったが、彼は自分の手柄と関係者の手柄をしっかり区別していて、発想は誰それ、実現は誰それ、と関係者の名前を挙げる。この辺が経済的な成功とは別に彼の人間関係が続く理由だろう。別枠でリドリー・スコットは余計な気遣い(手間)を省くために、気が置けない友人や家族など仕事以前に長年継続してる関係者と仕事をしろ、と言っていた。

SF最高傑作の共通点は、人類の万能願望を満たしたところで幸福には直結しないと示す事にある、との話題前後に、ジェームズ・キャメロンがノーランと共通してメッセージ(Arrival)が好きだと語ってるが、ならば今回の対談にドゥニ・ヴィルヌーヴも入れて欲しかった。

些細な話題として印象深い作品にスタートレック 死の楽園を挙げている。1967年5月2日 第24話

偶然だが、図書館で処分代替に無料で貰える本の中にスタートレック科学読本があり貰って来たところだったので笑った。

具体的な作品はあげられなかったが、黙示録的な作品は日本のアニメに多いと言われていた。いつだかインセプションが今敏のパプリカのパクリと言われてた事があったが、発想が同じなだけなのでパクリ云々はともかく、当時彼は知らなかったと言っていたが、彼が大小も今昔も問わず1点でも肯定できる箇所があれば作品を挙げて肯定する態度を見るに、恐らく当時既知だったのではないか。

3000円は高いが、自分は買う目的が明確だったので不満は無い。もっともTENETを見て、彼に限らずもう映画を見る機会は減らそうと決めたが、彼らのように世界最高の仕事をしている人間の思考や発想や行動には興味があるので、今後もこれらの本ならば読むだろうし、その点では今回も面白かった。