2020年6月23日火曜日

ゴールデンゴールド(7) 堀尾省太- ついに経済の最終段階である戦争に突入

本作には宗教や歴史や経済や恋愛や、様々な要素が含まれるが、7巻に限れば多様性の功罪だろうか。
堀尾省太の描く神は、前作の刻刻も同じだが土着神であり、人類全体、地球全体を動かすチカラは無い。
しかし、あなたの人生の物語に収録されてる唯一神が世界と人類に及ぼす影響の話「地獄とは神の不在なり」と何ら変わらない。
ミクロとマクロは同じ理屈で動いても同じ結果にはならない。
同じ結果から遡行しても、同じ原理では動いていない。
そのぶれが、宇宙誕生から今まで継続していられる理由だが、結局のところ、神を物理的に接触可能な存在にしたところで、神の根拠と結果、判断は我々人類に理解できない。

今回特に面白かったのが、単一の神が仕事を増やすために分身したのに、その分身同士が戦争を始めた。
結局のところ、確率的に生き残るには最後は殺しあうしかない。
そして、1945年まで、戦争は経済を破壊しながら救う手段であった。
超限戦の時代に入っても戦争は経済の手段だが、その恩恵が国ではなく上層の独占と指摘されて久しい。
ここにきて多様性と称した増長が神の手にあまり、しかも、根本的にひたすら(限られた)人類を救い続けようとしているだけの神が、ついには神のチカラによって滅びかけるという。

本作の神は、平等でも万能でも無い。
それでも人類より上位の存在だが、宇宙全体を扱えず、地球の一部に過ぎない国の断片でしか生きられない神もまた、所詮は領域に縛られた哀れな存在であるというのは、他の生物と変わらない。

本作の挑戦は多岐に渡るが、富国と強兵を知ってか知らずか、経済を扱う以上は避けられない功罪に間違いなく進んでいる。
大規模な戦争なしには経済的繁栄も社会的公正も実現できない、などという不愉快な現実は、すでに過去のものになりつつあるということになろう。