2018年5月22日火曜日

【コード理論大全】現代の和声教本の完成型

コード理論大全
和声の教本は有名なのが何冊かあるが、やっと決定版が出た感じがする。
  • ローマ数字とコード名が併記されてる
  • 既述の情報は「Aはn章で説明したBから展開する」など本文に用語の記述箇所が明記されている
  • コードの基本は3和音なのに、なぜ和声では4和音(7度=導音)が基本なのか、最初に記されている
  • 分数コードの説明が明確=3度の除外
本書はカデンツ(基本的なコード進行)を…
1-2-5-1ではなく…
1-6-2-5-1(C-Am-Dm-G-C)
…を基本として解説していく。
理由は、6=Amは1=Cの代替和音で6=1、そして6=Amからドミナント進行である。

そもそも、和声の原理は1つ以上の同音と、1つ以上の半音進行で展開する
最初にコレが説明されるので、本書の展開自体は数多の和声本と同じ順序の記述ながら、初学者が退屈でうんざりするドミナント進行も、派手な転調も、原理は同じで等しい動きなのだと、最初の数頁を読んだ初期段階で理解するのが容易。

ジャズが4和音(7度以上)を多く用いるのも、上記の同音か半音進行の条件を増やして、いつでもどこにでも自由に動きやすくする準備を常にしている、そういう発展をした音楽だと理解するのも容易。
クラシックの和声でも4和音=V7は最初の頁に書かれる程度の基本だが、本書はクラシック的な用語だけじゃなく、ジャズやポップスを前提とした現代的な総覧なので、コードはわかるのに、記述が何故かわかりにくいなど、入り口で間違えた印象を与えない。

クラシック系の和声で独学だと理解しがたいのが、禁則。
古典的な内容だと、禁則と断定されてる事が、不断よく聞く曲では平然とやられてる事がよくある。
本書も禁則は記述されてるが、理論の根拠となった時代も記述されてるので、納得できないまま暗記するのではなく、そもそも現代の我々と前提が違うと理解して、抵抗なく覚えられる。

今世紀で最もわかりやすい和声の本ではなかろうか。
厳密には和声ではなくコードの本だが、よく整理されているし、最初から最後まで読むのではなく、箇所箇所を辞書のように利用するのも念頭に編集されている。
ポップスや楽器演奏の応用程度なら、この1冊で充分と言える。
自分が初学だった頃にこれが欲しかった。
そうすれば色色な理解が10年は早かっただろうに。