2020年10月8日木曜日

黙示の島 佐藤大輔

彼の作品は皇国の守護者しか読んでいない。未完の羅列で有名なので単発で読めるとしてコレを選んだ。

セックスの必然性。本来B級映画のすぐ寝る男女に作品の必然的な設定がある。本来は男を喜ばせるだけの売女要素を作品の根拠にするのは明石散人の鳥玄坊にも言える。登場人物が自分たちの行動を異常と自覚して展開するのは面白い。

少数派の特権と[異常者/逸脱者]の矜持。核心を共有した[仲間/家族]。男の英雄願望を満たす大衆娯楽ではあるが、彼の場合は自己愛が強いのも自覚しながら逸脱者がどう扱われるかも現実的で自虐的でもある。恋愛に関してはあまりに直球で幅が無いのは相変わらず。彼の売りではそこではなく、逸脱者同志の配慮や共感や描写の細やかさと言ったらない。

皇国の守護者は戦争ものなので、準備から本番まで全要素の連続性が重要なので飽きる点が無かったが、これは所謂ゾンビものなので、事が起きてからは様式の消化だけで、前提となる設定と結論は面白いが、ドタバタ部分が退屈だった。

富野由悠季と作風が似ていて異なる、特に目立つ女の扱い。佐藤大輔の女は、男のための女しかいない。男に反発や説教をしても、作中のor読者の男を満足させる存在でしかない。言動自体がしっかりしてる点で萌えだけに終わっていないから楽しんで読めるが、根本は男にとっての萌えでしかない。

動物から人間/アウトブレイク。展開としては納得がいくが、もう少し島自体の環境や体系がわかるようなパニック場面が欲しかった。

個人的に、彼の文章は読みやすい。登場人物が極端な逸脱者、激情なのに文章は淡白で英語の関係代名詞のような延長が極端に少なく解説や比喩は多様されても装飾が少ない。作品の内容とは別に、文章という点で佐藤大輔と京極夏彦は自分にとって2トップ。