もともと後述する明確な動機があったので、丁度良かった。
好評
- 主役の人格や行動、また主役と同調する味方どころか敵すら、人格と行動が素晴らしい。
- 戦闘
- 英雄(個人)の強さより、大軍の段階的な戦術を描写。
- Eva Green が美人。
- ハンセン病
- そもそも、本作を見る契機になったのは、茂木誠がハンセン病の動画で紹介していたから。
- 病気自体は本作の題材ではないが、エルサレム国王Baudouin 4thが主要人物の1人であり、間違いなく必須要素の1つだった。
- イスラムへの配慮
- ヨーロッパ主導の映画で、キリストカソリック十字軍から見たエルサレムであるにも関わらず、サラディンを中心としたムスリム側も主役達と同様に人格者で馬鹿がいない。
- ブラックブック程の皮肉はないが、キリストカソリックと十字軍の汚点をしっかり描いてる。
- Jeremy Irons
- すげえおいしい役柄で、アルフレッドよりアルフレッドしてた。
- 思えばリーアムニーソンもいたし、監督違いのラーズとアルフレッド共演。
- 殉教
- 神のために死ぬのを厭わないのに、宗教よりも人命を優先する鼓舞は現実的であり、宗教の否定にもつながりかねない。
- Your quality will be known among your enemies before ever you meet them.
- あなたの人徳は、まだ見ぬ敵にも伝わるだろう。
悪評
- 音楽がうるさい
- 曲自体は悪くない。
- しかし、グレゴリオ聖歌、ケルト的、中東的、どれも音色も様式も強いのに、それが頻繁に流れる。
- かと思えば、サラディンの闇夜投石や、最後の決闘など、音楽を使わない素晴らしい演出が冴えてる。
- スローモーション
- 明確な演出じゃなく、何かをごまかすためのスロウやカット割が目立つ。
- 最初からスロウを意図した撮影ではないので、フレームレートが欠けてる。
- 構図は良いのに、微妙にブレてたり、2008年のノーラン革命前の映画なので、画質や画角の練りが少し足りない。
- 日本のアニメみたい
- 決め台詞での会話や、過剰な音楽連発など、日本のTVアニメみたいで、苦笑する点が多い。
- 主役の人格から無理がある展開
- 言うなればEva Greenとの恋愛だが、本気で神と世界、国民のために生きようとしてる男が、しかも子供の死に耐えられず自殺した妻を契機に自暴自棄だった男が、ふらふらっとあらわれた金持ち美女に飛びつくのはいかがなものか。
総評
細かい不満は数あれど、ロケはしっかりやってるし、全部ではないにしろ、CGじゃない大集団や異国を撮影していて、題材も描写も極めて真面目。愛でも神でも何でも良いが、人類が殺し合うほどの確信自体が愚かであり、それを止めたりやめたりする理由、行動もまた、その殺し合いと同じ確信であるという問題。
真面目にやるほど客入りが遠のくだろう要素を自覚的に腐らせずにやりきった、良い映画だった。
ただ、3時間は長い。