2020年4月7日火曜日

IQALUIT/イカルイト - カナダの北東イカルイトが舞台のイヌイット映画

IQALUIT

カナダの北東イカルイトが舞台の映画。
冒頭でイヌイット文化を示す記号としてアザラシ食肉を見せられるが、生肉だった。
アザラシって生で行けるのか。
ゴールデンカムイのアイヌすら加工を前提としていたのに。
映画を見終わってから知ったが、そもそもエスキモには生肉を食べる野蛮人という揶揄も含まれるとか。
作中後半ではイワナを生で食べる描写もある。
魚介類を生で食べられる日本人から見ても、生アザラシはびびった。

小物の保存にはジップロックが使われていた。
アメリカの商品なので不思議は無いが、フランスやスペインに言ったら自宅と同じダイキンのエアコンだった時の感動に近いものがあり笑ってしまった。

矜持/価値観
観光客を相手に、法外な価格で自作の彫刻品を売ろうとするのに、価格未満の幾らかの金額を彫刻品を買わずに渡そうとすると「売るための彫刻品で物乞いではない」と断るイヌク。
*イヌク/Inuk/イヌイットの単数形

【類似点】

価値観や現実として気になった点が幾つか。

1)基本的に人間は、温暖な環境では陽気に、寒冷な環境では陰気になる。
寒い上に、昼夜の区別が希薄だと、やはり感情的な要素は平坦になるのだろうか?
この場合の平坦とは、内心や本音ではなく、他人に示す態度として。

2)日本にも通じるが、食料と住居が海に依存した環境では、無に帰す諦観が日常なのだろうか?

3)本作では描かれなかったが、アイスランドを舞台にしたハートストーンでも、自然環境以外の人工的な娯楽に乏しい環境で早いセックス経験が描かれるが、本作も1部担っている「犯罪」の中で強姦は少ないのだろうか?
というのも、人気の無い状況なんぞ幾らでもあって、娯楽に乏しいからこそ飲酒が活発。
本作の主題ではないが、ヒロインが襲われる場面が無かったのに違和感を持った。
例えばロンリエストプラネットは実際にそこまで展開しなかったが、偶然にすれ違った1人2人の人間しか周囲にいないと起こりうる危険を匂わせた描写がある。
ウィンドリバーなんかは、民族的な問題と環境の両方から起こる無頓着な性犯罪を主題として描いている。
価値観としては村だから、法律も強姦もあるが、実際には犯罪ではなく私的な害悪とリンチに当たるのだろうか?

4)主要人物のイヌクがare you ok?ではなくbe you ok?と言っていた。
老いたイヌクなので、日常会話は出来ても、やはり母国語ではない、という意味なのか。
勉強じゃなく生活の手段としての英語は、こういう事は幾らでもあるのだろう。
外国語学習について色色と考えさせられる。


美形ではなるが、若い娘に夫を取られたおばさんの話なので、基本的にヒロインに性的魅力は無い。
しかし、終盤でイヌクとの交流でする昼寝だけはエロかった。
描写としても、イヌクを信用した上での行動という意味もあった。
地政学で大陸国家と海洋国家という概念がある。
その区別は主に武力だが、本作を見ると、主要の食料が魚介類であるか否か、という点を失念してる思った。
東京という海と無縁な生活でも、毎日魚介類を違和感なく無意識に食べてる状況は、思えば極めて贅沢であり珍奇だ。
本作は夫婦関係を契機に民族や環境を見せる映画だが、個人的に前者の夫婦関係はどうでもよく、こういった事ばかり考えながら見ていた。