公的組織や政治家の名前などをためらわずに出す演出で、原作の攻殻機動隊のような組織論を含んだ陰謀モノか、The West Wingのような歴史を下敷きにした理想論を描くのか、そういう作品だと思って見ていた。
キャラデザが腐女子なのは気持悪いが、時代上しょうがない。
言動もちょくちょく馬鹿げた少年漫画のようだが、題材に関わる演出はしっかりしている。
内容自体が欧米ドラマ的なのだが、単純に演出が、雰囲気ではなく明確に30分アニメとして作っていない。
尺は30分だが、構成は45分で3回から4回程度で区切るドラマ式。
OP曲もタイアップせずに短いインストのテーマ曲。
音楽もプログレ的で、売れる気はないが真面目という素晴らしい姿勢。
略語を説明なく台詞にいれるが、同時に画面で看板などを見せて略語の意味をわからせる。
時間の展開も、電話に表示される時計など1カットで作中展開の1部として見せる。
こういった演出が丁寧で、視聴者を馬鹿にしてない信頼の演出が素晴らしい。
主役が清濁を両立する話かと思ったら、3話で毛色が壹気に変わった。
言うなれば、社会派が急にオカルトに。
ある土地の枯渇が問題となり、その原因は大企業の暗躍かと思ったら宇宙人の陰謀だった…みたいな。
3話の演説は寄生獣を見ている気分だったし、最初のFと女がラスボスは完全にすべてがFになる。
原作者を全く知らないが、恐らくパクリ云々ではなく、もはや古典と化したこれら作品の信者だったのではないか。
前述の通り、The West Wing的な社会的要素を中心とした作品かと思ったら女神転生だった。
そんな感じ。
アニメの寄生獣やサクラダリセットが実現できなかった、ある地方都市のSF的な特殊設定があるにせよ、根本的には普遍的な生活環境に対する自覚と挑戦、みたいな事をやりたいのかと考えながら見ていたが、3話を見る限りどうにも違うようだ。
アニメに便乗して漫画の宣伝を見かけたが、酷い公式ネタバレだった。
月曜日!— 講談社「コミックDAYS」コミックデイズ (@comicdays_team) October 7, 2019
『バビロン』無料話更新
第17話「Elegia」
自殺法の先にあるという新世界。その価値観がついに語られる。https://t.co/zLu91bRzf5 pic.twitter.com/pSuKUIO9iK
つまり、命という資源を無駄しないために、生き方と等しく死に方も考えよう。
論旨はわかるが、極めて常識的で、逆にアニメ3話までの設定や演出は撒き餌に過ぎなかった。
4話以降どういう展開をするのか知らないが、この漫画の壹部を見るだけで、予想外の事も、考えつかない価値観の提示も無いだろう。
なるほど本作は多重人格探偵サイコなのだな。
これがアニメ3話と漫画断片を見た結論。
進んで死にいくのは間違っている。
しかし、凡人も決死の覚悟が必要な時が必ずあり、その時に自分は何が出来るのか。
自虐も英雄も愚かしく、必要なのは生きている時間を1秒も無駄にしない喜びと努力だけ。
それを撒き餌を使わず過剰演出もなく見事にやりきったのが15時17分パリ行き。
自分が今年に見た映画120本の内でナンバーワンだった作品。
ちなみに、2番はゴッホ最後の手紙。
どういうつもりでバビロンという題名にしたのだろうか?
人類の団結が神の気に触れて、神の怒りで離散した。
しかし、自分達は自由意志によって多様な分散を望む、という皮肉のつもりなのだろうか?
3話の段階で、損をした感覚は無い。
好き嫌いはあれど、視聴者を馬鹿にしたふざけた演出は壹切なく、この設定でどう展開するのか考えながら見られて楽しかった。
しかし、3話の展開と漫画の断片を見るに、ここらが限界のように思える。
つまり、社会に不満はあれど社会に挑む気がない、残響のテロルやエヴァンゲリオンのような馬鹿らしさ。
ユダヤ教の知識は増えてもユダヤ教徒の友人を得る気はないし、現在進行のイスラエルの問題にも無頓着…そういう人達が喜ぶ商品。
日本は欧米ほどは分散していないが、それでも地域により生活環境が異なる以上は利害の衝突がある。
民族的な幅が少ない日本すらそういう問題が起こり、狭く隔離された特殊な国/民族をどのようにまとめあげるのか。
そういう所にまで作品や作者が至ってるようには見えなかった。
面白かったので、悪印象は無い。
しかし、自分は3話で本作は終わった。