2019年7月24日水曜日

ゴールデンゴールド(6) 神の異質さに振り回されながら、神の有無に関わらず世界に対する人間の決断と行動。つまりジョジョリオン。


神とは名ばかりで人類そのもの

種族のために個体を切り捨て、同種が殺し合い優れた個体とそれに従う強い集団を残す。
人類そのまま。
人類と異なるのは、動機が同じでも、手段を更新している。
つまり、欲望のみ肯定して戦争は、福神(作者)が許さない。
割と単純な異世界戦闘の刻刻すら、作者は原因である2つの存在を倒さず、主役と対立させずに、遭遇する現象の1部として終わらせた。
本作の設定では、福神はしくじって封印された。
刻刻を踏まえて考えると、福神を倒したり封印せずに、台風や地震のような存在し遭遇するがやり過ごす手段で終わるのではないか。
問題は、それを漫画としてどのようにおもしろおかしく描写するかだが。
また、福神はもともと資本主義経済だけを突き詰める存在だった。
それが人神と金神が出現して、この2神はより具体的で限定的な価値観を持っているので、名前と異なり幸福という抽象的な概念ではなく、あくまで貨幣価値に依存していた福神の存在理由がどうなるのか。

及川と福神の曖昧

福神が生き残るために、及川の一部が戻ったのかと思ったが、純粋に恋愛のように描写されている。
仮に、早坂=福神ならば、及川の一部が戻るのは何も損なわないのに、早坂に対する及川を福神は止めている。

等しい価値観

原因が失恋とは思えぬ深刻な早坂の泣き顔。
作品が恋愛至上主義なのではなく、借金で経済的な行き詰まり、あるいは世界を守るための戦い、そして恋愛、いずれも等しい価値として扱われている。
この点でも、目指す場所はジョジョリオンと同じ。
神が異質な存在としてある現実的な世界観。
その神が存在しない読者の現実と、神の有無に関わらず共通する現象や価値観。
そして、神の有無を問わずに、それら世界にどう対するか。

いずれも、ある程度の前提がわかっていて、主役の価値観は常識的で読者の理解も容易なのに、それに通じる現象と展開がまるで読めないという、そして現在進行ながら過去作品から実に見事に完結させるだろう確信があり疑いようのない名作。