2014年7月8日火曜日

【しわ Arrugas】「インチキね」はずるいだろ

冒頭の演出でやられた。
題材は知っていたのに「父さん」は誤訳かと思った。
映画としては、カット1からカット2に場所は同じでも時間跳躍するのは当然だし、人物Aが自分の姿を幻視するのも、過去を振り返る演出によくある。
そういう映画の基本的演出が、作品の設定だけでがらりと恐ろしい経験になってるのが面白い。
漫画が原作らしく、実写でやらなかった理由の1つだろうが、時間跳躍や幻覚などはアニメのほうが違和感ないだろう。
人物も火星人も均質に見えるし。あれをCGでやられたらと思うとw

運動の職員は、絵柄があれなんでどうもこうもない。
この作品を日本の絵でやったらどうなるかなんて考えた。

プール深すぎんだろw
作中で客寄せのお飾りとあったが、職員の気晴らし用なのだろうか?
プールの場面で、エミリオはミゲルの妄想で、あるいは人間関係とか環境も妄想でまともなミゲルがボケだった、とも思った。
財布と時計は絶対にミゲルやらかすという前振りだったが、盗んだのに忘れてる落ちもあるかと思った。それだと意味は違っても結果は同じだから無意味か。
財布と時計と靴下の落ちは、なるほど。そっちか。

現実に金の問題もあろうが、ボケ防止には刺激が必要で、ボケた人間を刺激の無い平坦な場所に入れるのは本末転倒じゃなかろうか?
妄想こそがボケ防止みたいな台詞もあったし、最近男は退屈より電気ショックを選ぶという記事が出たばっか。
ボケならボケきったほうが幸せか。
色んな作品で、こういうの題材じゃなくても描かれるが、状況と状態をわかっているのに箇所箇所が抜け落ちてるのが1番つらい。
イスタンブール婆やDJ、魍魎の匣の雨宮のように行き着いてしまえば良いのに。

基本的にカメラを動かさない平坦な絵作りだが、エミリオが医者にアルツハイマーかと思った面談でいきなりカメラがファストズームして驚いた。こういう演出をしてくるのか。
記憶テストは、健康者でもあやしいね。
昨日の朝食や夕食なんざ、自分もおぼえていないw
質問が朝食から夕食に変わってるのも、案外気づかない人がいたんじゃなかろうか?

モデストやべえ。
「インチキね」はずるいだろ。
音楽が鳴りっぱなしだったのが勿体ない。
雲が来たところで音楽を止めて、雲が過ぎ去って太陽が見えだしてから音楽もクレシェンドしてきたほうが良かった。
それにしても雲に入り、純粋に感動してるだけじゃなく、感動したくせに怪訝に言ったのが凄く良い。
言った場面で泣いた。
モデストをからかう女友達の乗りが、15少年漂流記の「ジェンキンスが顔洗った!ケイトのために顔洗った!」を思い出した。
モデスト夫婦を練り上げて90分の1作品にしても良い。
どちらかが死ぬかなんかで、その後に最後、思い出の雲を抜けて太陽を見上げる2人の後ろ姿を煽った構図でエンドクレジット。完璧じゃないか。
アニメのメルエム提供みたいに。
スカイ・クロラの最後も良かった。

ミゲルが2階に付き合ったの納得できん。
ミゲルがそこまでのものをエミリオに見出しただろうか?
エミリオを契機に目覚めて、それぞれにきちんと手配するのは良い。
ただ、イスタンブール電車に禁煙パイポはいらなかったんでないか?もともと吸わずに吸っていると思い込んでるだけなんだからw
火星人を水鉄砲で撃つ婆の顔が悪すぎて笑った。思わず「悪い顔だw」と言ってしまった。
しかし、過ぎ去って行く同居人だからミゲルはエミリオに優しいと思っていたが、それより感情的なキャラであり演出だったので、自分は納得していない。
1階の席で見なくなった時、自殺したと思い、それこそ相応しいと思ったが、すぐにそれは否定された。

最後はエミリオの微笑みと、雲が消える青空で終わってよかったんでない?
記憶の混乱が、雲や霧に表現されていたのだから、最後に薄雲が消える、肯定とも否定とも取れるが明確化した状況の抽象表現として、これで終わりで良かったのに、どうしてテリアでしめたのだろうw
イリュージョニストの兎と言い、ああいうのやめてほしい。純粋だから簡単に殺す系。
作品がちゃんとした上で無意識の乗りがわからないから、ありえると思えて、きつい。
もちろん、どちらも落ちには笑ったけどもw

結局、人の本意は出力しないと成り立たない。
植物状態でも意識があり、何十年ぶりに身体が動くようになり、それを伝えた実例もある。
モデストやエミリオの微笑みは感情的なものにしか見えないが、脊髄反射のような笑顔はありえないのだろうか?
作品の意味において1択だが、微笑みの意味を断定するのは危ういと思う。
それは、動いてなければ認識してないと断ずるのと同じ危うさじゃないか?
バットマンも言っているじゃないか。
It's not who I am underneath, but what I do that defines meと。
エミリオの話のようで、実はミゲルの話だった。
そういうことだろう。

フランスのイリュージョニストと言い、このスペインのしわと言い、ちゃんと作られて、しかも売れてるってんだからたいしたものだ。
日本も金をかけて東京怪童を映画化しないかな?