2021年2月27日土曜日

横浜SF 丁寧だがSF違いのスタイリッシュファッション

描写は丁寧だし、絵柄も綺麗だし、真面目な仕事で面白かったが、物足りない。

もともと客層が限られる分野で、絵柄がスタイリッシュなのは商売として正しいが、このスタイリッシュもまた客層が限られた分野で、狭い*狭い=狭い。

ペルソナシリーズのような気持ち悪さがあった。たまたま世界の中心が主人公だったという、未知の広さを自覚した意図した狭さではなく、ただ広さを描けないから狭さに甘んじた、同じ顔立ちの美形の内輪で盛り上がっている大学サークルのセックスのような感じ。

例えば、美女が陥る強姦などの実情や、奴隷を避けられて不自由ながらうまく生きてる状況など、秩序ある中での犯罪と、無秩序のなかの殺し合いや奪い合いは、等しく厳しく酷い、みたいな問題はほとんと放置。

あくまで美男美女がうまく悦に浸ってるだけで終わってしまった。

良かった点としては、日本をJRで全国ネットにして、そのAIが一種のガイア説の延長、日本という国、土地の意思のようにも解釈が可能な点。

例えば青山剛昌のヤイバなんかは日本は竜だとか、神話的にはそういうのもあるが、ARMSまで行くと日本を飛ばして地球全体になるし、国や土地の擬人化ではないが意思表現という形としては面白かった。

しかも、あくまでそれが主題ではなく発展が可能な要素として扱われいてる具合が。

絵柄自体は丁寧で、絵だけでも見られる充分な仕上がり。

人物絵だけじゃなく、人工物に限れば背景もしっかりしていて、その点では漫画としてしっかりしている。

モブすらこれだけの美女で、こういう事に無頓着な主人公なのはともかく、それとは別に、こういう事に反応する男だって、どんな時代や状況でもいるだろう。主役が無頓着なのは構わないが、美女はそれだけで状況次第では危険しかないといった事が、文化や状況の違いを対比するような作風で全く無視されている。

この山を見て、この漫画家は美男美女と人工物にしか興味がないのだな、と思った。

当然、無限に続く人工物の話だから、その指向は作品とも合っていて全く正しいのだが、描いてる対象の密度差が顕著で、自然環境にあまりに無頓着で笑ってしまった。

設定が無限に続くもろもろ、のわりに価値観が1次元。

人工物を引き立てるために、それと渡り合える自然物、という意識は無いように見えた。

天才vs天才、じゃなくて天才だと持ち上げるために存在する馬鹿との対比、のような。

SF設定としてはよくあり、その中で何を提示するかと楽しみにしていたが、恐らく原作からしてそこには興味がなく、別に何も提示が無かった。

この手の作品は感情的な要素が少ないほど良いとは思う。そこには同意する。しかし、感情的な人間や行動を扱うのと、それらが中心になるかは別問題で、本作は登場人物の行動や絵柄自体はクールでも、それらを作品の断片に過ぎないと割り切れずに、観測対象ではなく、読者の好意を意図して誘発している。

つまり、かっこつけてる若者で、その点で無限の中の1部という要素は消え去ってしまった。

自分には、作者と作品が若すぎて物足りなかった。