ヒックとドラゴンと違い、題名と予告と概要で知られる情報が全てだった。
しかし、
イヴの時間ほど不愉快じゃなかった。
意図して、あくまで子供向けテンプレに作ってるから、印象が違う。
結局(自律)ロボット作品の最悪、
人間の価値観を人間以外を利用して礼賛という嘔吐前提なんだけど。
子供向けテンプレ作品でありながら、
ヒックとドラゴンが素晴らしかったのは、人間の価値観を全肯定してるが、最後に、肯定した代償を主人公がうけおっている。
「人間って素晴らしい」じゃなくて、ある環境において素晴らしい生き方は出来るし、それは善であるけれど、善は人間と人間以外に万能じゃなく、善行すら償いが必要、ということ。
アイアン・ジャイアントは奇麗な作品だけど素敵な作品じゃない理由がそこ。
イヴの時間よりも対象年齢や演出をわきまえているからましだが、
異人種としてのロボットに人間(の価値観)礼賛させるのは間違っている。
観客に人間(自分)の不足を自覚させ改めさせてこそ意味がある。
異人種の正しさこそ重要なんだよ。
ウォーリー(WALL-E)も見た目とおりにハッピーエンドでも良いが、いい歳をした人間が見ると、最後に子供艦長が地球を喜ぶところで「え!?」となる。
無邪気な子供が見知らぬ場所で興奮し喜ぶのは良いが、地球の状態をあそこまでした子供より上の世代、大人達は、こんな状況に追い込み子供に残したのは荒廃した、させた地球だけ、喜んでる場合じゃないし大人はこれをハッピーエンドと見たら駄目だろ、という世代や立場により意味が変わるようになっていて、しかも、きちんと問題は深刻で現実に反映させるべき、学ぶ点がある。
【母親やばい】
色気に愛嬌に慈愛に理想の女すぎる。
私的女キャラトップ10に入れて良いくらい理想像でありながら幻想の気持ち悪さが無い素晴らしいキャラだった。
少年と反発するテンプレ仕事をこなすが、少年の言動を信じちゃいないが、あくまで興奮してる子供に「うるさい。疲れてる」と黙らせる理由を示すだけで、内容を全否定するのではない。
子供の話の内容を無視しても、あり方を否定しない。
アイアン・ジャイアントはロボと子供よりも母親の描写が凄い。
未亡人で疲れた母だが現役の女で誰かとくっつくんじゃねくらいの雰囲気が感じられるのに、描かれるのは母親像だけで恋愛の台詞や行動が一切なく、最後に「やっぱりくっついた!?」ってのをくっつけて見せずに、しかし関係は明らかってすげえ大人な演出。
捜査官が少年を見て、少年の身長にあわせたカメラに母親の首からしたが入ってきて、捜査官が目をあげて少年から母親にうつると、まず女の胸が捜査官の目に入り、それから目線とカメラが上にいき母親の顔、全体像が捜査官と観客に見える。
この性的な要素を隠さずに、しかし立場や場面の展開を含んだ主張じゃないが明らかにそういう目、という感じの演出も素晴らしい。
捜査官と対峙し、最後の戦いくらいの決意と勇気を示すのに飛行士のヘルメットをかぶり、ベッドで構える少年。
捜査官を正面に、右側手前に少年の父親の写真を観客に見せて、そこで初めて、父親は第2次世界で戦死したのだと観客にわかる。
そして、当然、ヘルメットは父親の代替。
もちろん、時代設定や登場人物が母親と少年だけなので、ある程度の年齢の観客にはすぐにわかることなのだが、その明示演出が素晴らしい。
ヒックとドラゴンでも似たようなのがあった。
最終決戦前で息子に謝罪するヴァイキングの長であり父親は、謝罪場面の前後では兜をかぶっているのに、謝るカットだけ兜をかぶっていない。わざわざ脱ぐ、脱げる場面もないまま、かぶっていない。
これはミスじゃなく、貧弱で兜(強いヴァイキング)に憧れて、しかし能力と価値観の差異でヴァイキングになりきれなかった主人公が、ヴァイキング全体の最大の危機にヴァイキングと示す兜もかぶらずヴァイキング全体を考え守るために戦い、その状況下で無力な現行のヴァイキング(父親)が主人公に明示,要求してきた事が間違っていたと認めた父親。
それまで上下関係であったが、ヴァイキングのために互いに等しい立場になり、異なる理由で兜をかぶらない2人、兜をかぶれずに兜が象徴する対象全体の中心となり動く主人公と、兜をかぶり明示してきたが現行のヴァイキング価値観に勝り有効な挑戦をする主人公に兜をかぶらずに父親として謝る。
ここまで意味を説明しなくても30秒くらいの会話と映像ですんなり、へたすれば見落とすかもしれないくらいに自然で意味のある演出ってのがある。
巨人と少年の交流を描いた作品のようでいて、実は第2次世界大戦を終えて冷戦を迎えて、戦争の恐怖と終戦の安堵とを常に抱えながらそれぞれの日常を構築し生きる大人達を描いた作品、のように思えた。
というのも、作品の説得力を持たせているのは、大人達の描写があるから。
もしも大人達を省略したら、本当にただのテンプレ作品になってしまう。
ただ、巨人の攻撃が核爆弾と同等である威力を示した場面は、巨人の攻撃が明るい緑色なので場面として全く怖く見えなかった。
あの爆発の光に、目をつぶって顔がうわむきの母親が顔射みたいでエロかった。