最初の10分は良かった。
絵柄は格好いいし、暗証番号に手間取ってるルパンに対して、次元が防壁を銃弾1発で壊して平気な顔して、警報が鳴り響く中でルパンが平然と宝を内ポケットにいれて「俺はしくじった覚えはねえぞ」と愚痴る。
格好いい。
しかし長くは持たなかった。
折角、日本じゃ主演をやりにくい系統の玄人小林清志を主演にしてハードボイルド作品なのに、わざわざ「俺たちは仲間じゃねえ」なんて幼稚な学芸会の台詞を言わせて、最後は「俺に言わせれば浪漫がねえ」って…。浪漫ってのは言うんじゃなく示すから浪漫なんだろ。
「俺たちはしがない泥棒と」「しがないガンマンか」という最後の会話、これはルパンたちを見下した敵が「しがない泥棒」とルパンを評価し、作品の終わりでルパンが敵に逆転した時に皮肉を交えて「しがない泥棒」あるいは「泥棒風情が」と状況と評価が反比例してるから格好いいのであって、キャラが自己陶酔に言うことじゃない。
不二子の乳首が見えるからか年齢制限があるけど、作品の精神年齢はせいぜいが高校生。
ドイツとイングランドを足して2で割ったようなどこかの国が舞台。
架空の国だよね?
ベルカやカダスみたいな…。
最後に銭形がファンサービス落ちとして登場するが、出演者に山寺宏一の名前が書いてあるので何の驚きもない。
その前のマモーにこそ笑ったけどw
音楽が作品に貢献していない。
音楽自体はオサレで悪いものじゃないが、映像を盛り上げるような構成じゃなく、ただのリズム音楽、BGM。
次元大介の逆転狙撃。
あれちゃんと格好いいのに、音楽が単調なリズムオサレ曲なんで見せ場として興奮できない。まるで映像的でない。
あと権利の問題か大野雄二のテーマ曲が無い。
007やミッションインポッシブルみたいに、編曲を変えてもOPだけはあの曲か、どこか見せ場だけで1回あれが流れるという演出は必要だと思うのだが…。そうじゃなきゃルパンの声優をものまねを使ってまで継続した意味が…。
COWBOY BEBOPが何故名作なのか?
それは、スパイク、ジェット、フェイ、エド、アインの登場人物が互いに思い合っても核心はそれぞれ別のところにあり、それぞれ個別の事情話ではそれだけを大事にして、説明しないスパイクに怒っていたジェットですら、いざ自分の話になったらスパイクやフェイに説明せず放って出て行く。
和気藹々なのにどこか危うい関係。
ルパンはどうか?
特に、コメディじゃなくハードボイルドを気取った本作はどうか?
逆で、言葉じゃツンだが結局は「俺たちは最高の仲間だ」デレ学芸会。
そういうのはワンピースでやってくれ。
日本でハードボイルドは無理なのか。
ハードボイルドって「格好いいだろ?でもお前らにわかってたまるかい!」という両面によって成り立っていると思うのだが、日本のそれは、まず「好かれたい」という願望が現れていて、薄っぺらい。
それがルパンと言われたら、それまでだが。
日本でも人狼 JIN-ROHやるろうに剣心 星霜編やGunslinger Girlなんて良い作品もあるのだけどね…。
生き様を見せる気がなく動いてる様だけを見せられて感動できるのだろうか?
次元と歌手の関係こそ、もっと説明台詞じゃなく、無言や間合いを駆使して互いの関係と思いを察せられるような構成と演出ならちゃんとハードボイルドして次元の動機も逆転の良さもあったはずなのに。
この作品を面白いと思うのは良いが、この作品を「渋い」なんて言ってる人は、不断どんだけ「甘い」ものを見ているのだろうか?
マクドナルドのハンバーガをどれだけうまいと思っても、それはマクドナルドのハンバーガであり、味にも健康にも限界がある。
それがルパンと言われたら、それまでだけど。
「渋くて格好いい」という評価を知って見に行った自分が馬鹿だった。
くちなおしにL.A.CONFIDENTIAL見よう。