まずシンセベースから始まる。
当然ながら、これは電気や電子などが一般的な、ここ100年程度でやっと誰もが使えるようになった楽器であり「現代」を意味する。
本編においてガーディアンなどが担っていた役割に相当する。
その現代あるいは未来的なモノから、ピアノ(後述)と、クラシック的様式(管弦楽)とジャズ的な様式(ピアノ)が同時に混在したままつながり、つまり歴史を逆行しながら、数百年に続き今でも残っている「過去」と「現代」が一度に発現している。
また、曲の激しい中で、実は後ろでずっと笛が鳴っている(楽器はピッコロとか西洋かもしれないが)。
これは当然ながら東洋であり、西洋中心的な中に、ひっそりと確実に東洋が(リズムと音程の隙間)穴を埋めている。
【3/4拍子】
現在の西洋音楽の基準は4/4拍子で、イントロは最初4分音符だけで、4/4拍子に錯覚する。
しかし、ある時からリズム頭(強拍)が明確にされ3/4拍子だとわかる。
何かを勘違いして失われていたと思っていたものが、実は最初からその形で存在し充分であったと思い知る。
また、3/4拍子は、キリスト教の最初期では一般的な様式であり、そして、それを参考にしてる本作のトライフォース(ゼルダ/リンク/ガノン)を意味する。
【ピアノ】
ピアノは楽器の完成形である。
その理由は、1人で和音を、しかもギターなどと違い、それぞれ単音を異なるリズムで演奏できる。
つまりピアノは、それまでの知識や技術など歴史が集約したリンク(勇者)そのものであり、前述の3/4拍子も、このピアノが入ることによって誰にでもわかる明確なものとなる。
【5英傑(リンクと4人)】
現在、西洋音楽理論の基本は、重複なしの3和音(ドミソなど)と、3和音の重要な音を補強するためのベース(チェロとコンバス)の重複2和音を含んだ5和音である。
理論的には重複1音を含む4和音であり、実際の演奏における基本が5和音。
ゼルダシリーズ自体が、作中で頻繁に楽譜や楽器を演出に使っているが、今回は、題材にせず共通項として無意識の土台にしている。
【オーボエ】
ラスボス曲に限らず、本作はオーボエが多用される。
犬が男、猫が女、のような簡単な印象論のように、楽器にも男と女の印象論がある。
極論すれば、高音が女、低音が男。
これは素人でもそういう印象を抱き、だから「けいおん」など二限らずベースやドラムなどを女がやると、ある種際立った印象をもつ。
オーボエは木管楽器であり、明確な意図が無いとないがしろにされる楽器群である。
その理由は……ヴァイオリン系は音の長短(音価)、音の大小(音量)、音の高低(音程)が楽器上もっとも融通がきいてこなせる、単音楽器でありながら何百年も愛される。
そして金管楽器は、ヴァイオリン系ほどに自在ではないものの、人が吹くので前述の加減がある程度きくうえに、音(音色)が派手で、楽器の数が少なくても目立つ。
クラシックのオーケストラを見ればすぐにわかるが、金管楽器は弦楽器(ヴァイオリン系)よりも数が少ない。
以上の理由で、予算がある企画でも、大きな企画ほど、存在はするが中間的な木管楽器は基本的に印象が薄くなる。
その中間的な楽器を、意図して明確に中心としている場合が多くあるのが本作。
かつ、オーボエは基本的な木管楽器群(4種類)の中で、上から2番目の音程を担当し、男でも女でも当てはまる中間的な音程を担当する。
これは、リンクが男でありながら中性的である意図とも重なる。
【総評】
以上の理由から、本作をプレイしたら間違いなく感じる、これまでの集約とこれからへの提示。
過去と現在と未来。
さらに、東西の文化(歴史)をまとめる挑戦。
しかも、性別など属性が明らかでありながら、それらに違和感なく、異なる属性でも、それになりきれるだろう配慮。
これらが本編だけじゃなく、音楽も印象だけじゃなく、しっかりと統一的な意識でまとめられてる。