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2021年1月2日土曜日

2020年に読んで良かった本30冊

順不同。順位ではなく基本的にA-Z。1部分野や作者でまとめている。

また、出版は2020年に限らない。あくまで自分が読んだ時期が2020年だったというだけ。

以下、30冊の羅列。
  1. しあわせの理由
  2. ずっとやりたかったことを、やりなさい。
  3. なぜ柳家さん喬は柳家喬太郎の師匠なのか?
  4. アダムスファミリー全集
  5. アメリカ民主党の崩壊 2001-2020
  6. サイゼリヤ おいしいから売れるのではない 売れているのがおいしい料理だ
  7. ザ・ペンシルパーフェクト
  8. タバコの世界史
  9. テクノロジーは貧困を救わない
  10. データでわかる2030年 地球のすがた
  11. フレーミング「自分の経済学」で幸福を切りとる
  12. ホロコースト産業
  13. 内沼映二が語るレコーディング・エンジニア史 スタジオと録音技術の進化50年史
  14. 変身
  15. 奇術師
  16. 子どもは40000回質問する
  17. 平和主義は貧困への道
  18. 我、自閉症に生まれて
  19. 教育は何を評価してきたのか
  20. 日本マンガ事件史
  21. 日本和声
  22. 日本国憲法の日本語文法
  23. 母の記憶に紙の動物園
  24. 火星の人類学者
  25. 目黒の手話
  26. 絶対音感
  27. 自閉症は漢方でよくなる
  28. 21世紀の落語史
  29. KGBスパイ式記憶術
  30. PCエンジン コンプリートガイド デラックス

2020年12月29日火曜日

うめざわしゅん パンティストッキングのような空の下 こじらせを客観視するこじらせ

荒木飛呂彦や岩明均やクリストファーノーランのような、主流派と折り合いをつけつつ明らかに一般的でない思想を常識として扱える作家を探してる流れで、うめざわしゅんを知った。

ひとまず1冊だけ性格を知るために読んだのがパンティストッキングのような空の下

2020年12月22日火曜日

自閉症テンプル・グランディンの母親の日記から何を学べるか

加重布団の先駆者として知った自閉症のテンプル・グランディン。

彼女に関する本を幾つか読んでみたが、我、自閉症に生まれての彼女の母親の件が1番強烈だった。

19歳で彼女を生んで、自閉症とわかった後に捨てず虐待もせず、そして天使だとか過剰反応もせずに専門家の助言を求めながら専門家に依存せず彼女を育て切った知能と覚悟と行動。

荒木飛呂彦が描きそうなキャラだが、現実の人間である。

彼女の著書には母親の日記が引用されているが、20年前から続けてる日記があり、そしてそれが著書の段階まで残ってた、残してた事。

以下は引用ではなく読んだ自分の要約であるが母親は彼女をこう評してる。

朝昼は元気で子供らしくわがままな事があるにせよ、それは子供として当然で愛らしい。しかし、何かの契機や夜に疲れてくると、もはやテンプルなりの価値観とは別の無分別な癇癪となり手に負えない。両者の結果は同じでも意味が違う。そして、前者でテンプル自身が悪いと思った事は、テンプル自身なりに反省して、例えばモノを壊したりこぼしたら自分から掃除をする。つまり、テンプルなりの倫理観や社会性はちゃんとあり、その上で自閉症だと問題の頻度が高いからテンプル自身も母親も手に負えない事ばかり。

上記のような観察と分析を、自閉症とは別に単純に19歳で初めての子育て最中に考えられる能力の高さと、それを書き残して成人後に自立し社会的にも成功をおさめた娘に見せられるまで日記を残し続け最後までやりきった人生。

テンプルは母親を中心に自分を助けてくれた人物に正真正銘の感謝を示しているが、実際にこの母親の偉大さは、ある意味で彼女に勝ると思う。

最近になって今更アルジャーノンに花束をを読んだ。この中の主役の母親こそが現実には典型ではないかと思う。ある時期までは子供を過大評価して、ある時期から過小評価して、結局は疲労して見捨てる、あるいは自殺する。この小説の場合には、知的障害者からの無邪気な性的虐待も匂わせていて、その点で母親の反応も幾らか正当性を持っている、ただの母親の児童虐待と描いていないところにも配慮がある。

小説のほうが現実的で、現実のほうが奇跡的である理不尽。そして、この母親という1役の内訳を国や人類単位で応用出来ていない現実。

テンプル・グランディンは自閉症の全員が素晴らしい才能を持ってると願望だけの主張をしているが、つまり環境さえ良ければ万人が活躍できるという事で、これには同意するが、それにしてもこれは行き過ぎで、結局のところ幸福であるかは確率的な幸運に過ぎず、その点で彼女は母親において幸運だった。問題はその母親が幸運であったのかどうか。そして、幸運とは無関係に幸福を獲得できるものなのだろうか?

2020年12月19日土曜日

行動経済学から見る人類という小動物

年単位の長期で物事を実感的に考えられる環境と能力は少数派。たいがいの人間は小動物が如き1秒前後の瞬間しか実感的に考えられない。というより実感が全てで考えられない。

基本的に報酬は先払い、未達成に限り没収のほうが有効。

貧困で学力が低い学生に、読書と読解テストに対して報酬を出すと38%は読書を継続または理解力はあがったが、その意欲や結果は学校の成績には反映されなかった。結局は細分化された分野の要素1つ1つに対策が必要。

自閉症の治療と同様に、自閉症の特殊な恩恵から多数派一般人の治療(対策)が必要。

根本的に、小さな手間を惜しんで大きな成果を失うのを選ぶ。

2020年12月18日金曜日

ジョジョリオン(25)を読んだ感想 - ジョジョ至上最長であり最高傑作

漠然と異生物、異種属という扱いで人類が抱える問題、人類が挑む問題を描いてると思っていたが、具体的に珪素生物を持ち出すとは全く予想していなかった。

2020年12月16日水曜日

フィンランドと比較した日本の教育問題

どこにも楽園など無い。その前提でフィンランドを肯定して日本の問題を書く。

フィンランドの教育の目的は早期自立。日本の教育の目的は問題の解決や予防ではなく軽減。つまり臭いものに蓋。そして腐り続けてる。

フィンランドにも犯罪やいじめは幾らでもある。それを自覚し公的な情報として教育に盛り込む。また、フィンランドの敵は外国である。つまり、可能な限り内輪揉めを避けたい。兵役もそれ。

日本は海外の問題の大小を問わず、結局は内輪揉めこそが全て。基本的に欧米便乗国に過ぎないのに、コロナ対策の世界的な減税は無視。民族的にも敗戦後のアメリカの方針でも、結局は自立が許されないし拒む国。

永遠の子供。ただし、子供の突飛な発想や行動は、文化的または技術的に有効な場合が多くある。つまり、ある種のランダム的な成長のために日本は生かされてる。

2020年11月14日土曜日

アメリカ民主党の崩壊

本書渡辺惣樹の主張は、民主党と共和党を跨ぐネオコンこそが元凶であり、より自由主義/干渉主義/ポリコレなど妥協を許さない民主党の方針はいずれ自滅し、2大政党制すら崩れるのではないか。

そこまで行かなくとも、2019年の執筆時点で、2020年の大統領選は共和党(トランプ)の勝利と断言している。

*本書の発売は2020年


2020年10月21日水曜日

ときど 努力2.0 - 携帯電話と果物と花

内容に特別な事は無い。それを継続できるのが特別ではあるが。彼という媒体にこそ価値を見てる読者向け。

  • 自分同等以上の同業者と情報を共有する。
  • やりたくない事は、やりたい事の中に盛り込む。
  • 上記を含むが、日課にする(作る)。
  • 自宅は寝る場所だけにする。
  • 質より量。量の中から質は見出せるが、逆は無理。
  • 解説が可能になるまで分析する。
  • 成功より失敗が教材
  • 記録(日記)をつける。

本自体はよく整理されてるし、既存の方法から、自身の具体例に続いてるのは読みやすいし、証明の1つ。

特徴的なのは日記だろうか。日記というと基本的には自分の思考などを文章にするのが一般的だが、彼の場合は幾つかの項目があり、それをABC評価していくだけで、文章を書かない。これは情熱大陸でも披露していた。彼とは無関係だが、落語家の瀧川鯉昇が著書の鯉のぼりの御利益で披露してる日記は、修行時代に食事をおごってくれた人物,食事,日付だけが1行1日で書かれてるだけのものだった。それに通じるものがある。日記など所詮は想起する契機に過ぎないので、日付を見て思い出せるなら日付だけでも充分という事か。その契機が何かを自覚して確立しろと。

前著にも共通するが好きこそ物の誉れ。継続するのは簡単な動機と、可能な限り容易にする環境作り。

主題である努力とは異なるが、1点ジョジョリオン果物と花くらい発見と同意があったのは、携帯電話の話。彼が通ってる空手の先生曰く「昔は携帯電話が無かったので電話など連絡をとる時間が限られ、夜を避けるのは礼儀だった」これは全く同意する。自分はよく手軽と気軽は違うのに混同されてると評してるが、道具や手段は可能な限り手軽であるべきだが、それを実行するのは必ずしも気軽であってはならない。手段と実現を混同するテクノロジーは貧困を救わない問題。

The Prestigeの原作奇術師では、仕事の大工の怪我で趣味の手品を出来なくなるのを恐れて仕事をやめ、その上で仕事にしたという展開があるが、自身の執着の自覚というのは、小説や成功者に書かれるほど容易ではない。この小説の場合には些細な手品も生涯をかけた修練に支えられ、努力や好奇心を強迫観念とすら書いてる。

本書の場合は、彼の経験と分野を大衆に肯定させるため、あるいは分野の人口や発展も念頭にあるため、逆に強迫観念や義務や苦悩を願望や好奇心に置き換えている。ただし、努力とは結局のところ行き詰まるのを前提としていて、その点では文章や語彙は優しいが、その厳しさを自覚された内容であるのは変わりない。原理自体は何も得るものはないが、実例の1つとして何を得られるか。

2020年10月16日金曜日

ジョジョリオン 24巻 - これまで崩壊を避けてきた荒木飛呂彦が描いた崩壊からの再生

  • 家族の崩壊
  • 古典的な父殺し
  • この顔が描ける荒木飛呂彦
  • スキャン臭くない背景
  • 院長=レクイエム。擬人化された運命。
  • スタンドの都合の良さ。見える見えない格差。ホラー映画。
  • 戦闘は装飾。決断と行動と損失と獲得
  • 石仮面とエンヤ婆。弓矢。

家族の崩壊。これまでのジョジョは、家族愛が絶対的だった。脇役や主題としての不幸な境遇は幾らでもあったが、少年漫画という事もあり主役の家族には絶対的な信頼があった。しかし、ジョジョリオンには既存と同じ荒木飛呂彦流の肯定的な要素がありながら、これまで最初から再生を描いていたのが、その前の崩壊を描いている。主役の不都合な家族愛に少し踏み込んだストーンオーシャンすら1話で既に崩壊が終わって再生から開始されている。

2020年10月14日水曜日

目黒区が発行している「目黒の手話」23区にそれぞれ欲しい「地名の手話」本

図書館で見つけた目黒の手話という本。表紙が厚紙で補強しただけの体裁で明らかに市販の本とは異なるが、奥付に価格が書いてあったので、1000円で販売されているらしい。しかし、ブックオフやAmazonなど、新古両方とも検索表示されなかった。

初版が2003年で、2013年に改定したらしい。

権之助坂祐天寺の地名手話は本書(目黒区聴覚障害者協会)が定めたらしい。

区内の地名や施設の名前などが掲載されている。これ23区全部にあるのだろうか? だとしたら23000円で全部揃えたいが、同じ体裁で「**の手話」と検索しても似たような本は見当たらなかった。

地名というなら、そもそも47都道府県それぞれ独立した手話の本があるのだろうか? あるなら読んでみたい。本書を読んでみると、手話以前に知らない地名(場所)もあり関連情報としても有益。

2020年10月13日火曜日

刑務所の読書クラブ - 犯罪と知能の相関あるいは人類の欠陥と限界

刑務所の読書クラブ:教授が囚人たちと10の古典文学を読んだら

日本の翻訳は2017年で、原作は2016年。ほぼ時差がなく翻訳されてる。

場所はメリーランド州、ワシントンDCの北東20km程度のボルティモア、ジェサップ刑務所。

自分は見ていないが、刑務所 1日体験でも取り扱われた場所で、アメリカだと刑務所が民間経営の場合があり、その流れでメディア露出が多い、積極的なのだろうか?

ボルティモアと言えば、犯罪による死亡が50人/10万人で、NYは3.4人、東京は0.07人と比較して異常であるとアメリカ民主党の崩壊 2001-2020に示されてた。この場合は民主党批判が主題だが、1983年から下院で、ボルティモアが選挙区のイライジャ・カミングスが黒人貧困も犯罪件数も汚職にも無力、というか投票数を稼ぐ名目のために放置してる実態など書かれてた。

本書に戻ると、人間というものが、どれだけ環境に適応可能であり、運命論的に環境によって決まるか。正直なところ、彼らが読んだ本はどうでもいいし、彼らの発言内容もどうでもいい。読書と思考が一定の知性と行動を刺激し実現するのは自明で、本書でも事実そうだったが、終身刑を含む28歳から67歳の受刑者のうち、保護観察などで出られた人達は読書をやめ、iPhone,fcebook,ポルノ,カジノ,ストリップ、そこまで極端なものでなくとも、味が濃くて高カロリー食品を求めるなど、思想や実現などと程遠い消費者の一部となった。

読書がYoutubeに勝るという話ではない。少なくとも著者は好みとして両者に格差を暗に示してるし、自分もそれには同意する。実際に自分は、ここ数年で映画,漫画,ゲーム,ネットを合わせた時間よりも本を読むほうが楽だし利益があると判断して継続してる。ただし、それは充分にこれら娯楽を経験したからこそ言える事で、10年単位で刑務所にいた人間が、ネットや映像や性欲の刺激を求めるのは当然だとも思う。

本書でも、一般人に馴染めたからこそ、そういった傾向の消費に混ざれたのだと認めている。理想としては、そうであって欲しく無かった事も認めつつ。

受刑者の有無とは別に、結局のところ社会がそういった消費を求めてる。月に1冊の本を読んで考えるよりも、翌日には覚えていない動画を1日に10本も見て広告料と過剰な消費を促してる。

自分はもうそれにうんざりして、可能な限りそういった連中に1円も出さずに避けていられるが、それでもインターネット自体が不可欠であるのも変わらない。この辺は、特定のメディア/媒体批判というよりも、テクノロジーは貧困を救わない問題なのだろう。有無と是非は異なり2*2の4パターンを把握した上で有効を選択するのが知能であると。

本書でも言われるが、10代の頃から殺人で収容された犯罪者だろうが、本を読んで理解あるいは予想し話せる能力はある。少なくとも状況次第では、殺人犯もそれを実行する。つまり、犯罪は知能や個性によるものではない。

9月に香川県で26歳の母親が6歳と3歳の娘を車に放置して飲み歩いてた結果、2人を死亡させたとして逮捕された事件があった。子供が死んだからには逮捕は当然だが、逮捕の前に、2人の子供がいる単身母の彼女に、社会や国、あるいは親として間違ってるなどと批判する類の発言者は何かしたのだろうか? 事件が報道されても、記事には似た境遇の救済措置や、事件の経過などは全く続かない。事後の罰は必要だが、事前の策が無い、行動もしない無能が犯罪を増長、触発や量産するという自覚が無い。

教育は何を評価してきたのか官僚の反逆などは、これらの経路依存や無能や怠慢を、ある程度の日本固有の問題として語っているが、歴史上は武力衝突が減ったとはいえ、安く買い高く売る、自身の過大評価と他者の過小評価の殺し合いは無くならず、根本的に人類が抱えた欠陥は1万年程度の結果を踏まえても改善が見られない。

2020年10月11日日曜日

クリストファー・ノーランの対談が30頁ある「SF映画術」

もともとジェームズ・キャメロンの対談がアメリカのTV番組であり、その日本版の宣伝をかねた文字版がこれ。

自分が興味あったのはノーランだけだったので、他の人物の箇所はまだ読んでいないが、対談相手は以下。

  • スティーブン・スピルバーグ
  • ジョージ・ルーカス
  • クリストファー・ノーラン
  • ギレルモ・デル・トロ
  • リドリー・スコット
  • アーノルド・シュワルツネッガー
副題にジェームズキャメロンを含む6人の巨匠が語るとあり、帯には写真が無いが。シュワルツネガーが出演者側で唯一の対談相手。

写真はともかく、対談の文章頁すらフルカラーは金の無駄ではないか。

ただし、1人30頁前後と、量に関して不満は無い。

2001年はSF映画映画の基準だが、「自分のような金の無い映画監督には無理」ととにかく現物を作らせる人間の言うことかと。*もっとも、これは若い頃に感動した当時について語ってる事だが。

インターステラーのドッキングは2010年を参考にした。2001年の続編かつ別監督だから過小評価されているが、ノーランは肯定的。

「ポップコーン映画は需要があり作るのも好き」これ自体がどこまで本音か不明だが、TENETを見る限り、それを実行したと思う。

インセプションはiPodなどの、目的の曲を聞くのに何層もタップしなければならない不便なインターフェイスを参考にした。これを読んで、偶然にも最近読んだ佐藤大輔黙示の島を想起した。それは作品の主題ではないが、登場人物が地図とシャーペンを持ち歩く理由に、PDAを使わない理由は、自分の発想を、他人が考えた半強制的な規則に従いながら実行する不便さを嫌い、とあった。そこには自分も同意する。パソコンやiPadは自分に不可欠な道具だが、年々利用頻度は落ちて、紙と鉛筆(ボールペン)が先にある。発光、電源、重量など、これらのデジタル電子機器は原理的な問題を解決出来てない。

アーティストには無理で、計算/アルゴリズムでしか出来ない事がある。しかし、計算結果から是非を判断するのが人間なので、その曖昧が芸術でもあり、つまり両方を駆使する。計算も判断も人知である事に変わりない。

ダンケルクのインタビュウでもそうだったが、彼は自分の手柄と関係者の手柄をしっかり区別していて、発想は誰それ、実現は誰それ、と関係者の名前を挙げる。この辺が経済的な成功とは別に彼の人間関係が続く理由だろう。別枠でリドリー・スコットは余計な気遣い(手間)を省くために、気が置けない友人や家族など仕事以前に長年継続してる関係者と仕事をしろ、と言っていた。

SF最高傑作の共通点は、人類の万能願望を満たしたところで幸福には直結しないと示す事にある、との話題前後に、ジェームズ・キャメロンがノーランと共通してメッセージ(Arrival)が好きだと語ってるが、ならば今回の対談にドゥニ・ヴィルヌーヴも入れて欲しかった。

些細な話題として印象深い作品にスタートレック 死の楽園を挙げている。1967年5月2日 第24話

偶然だが、図書館で処分代替に無料で貰える本の中にスタートレック科学読本があり貰って来たところだったので笑った。

具体的な作品はあげられなかったが、黙示録的な作品は日本のアニメに多いと言われていた。いつだかインセプションが今敏のパプリカのパクリと言われてた事があったが、発想が同じなだけなのでパクリ云々はともかく、当時彼は知らなかったと言っていたが、彼が大小も今昔も問わず1点でも肯定できる箇所があれば作品を挙げて肯定する態度を見るに、恐らく当時既知だったのではないか。

3000円は高いが、自分は買う目的が明確だったので不満は無い。もっともTENETを見て、彼に限らずもう映画を見る機会は減らそうと決めたが、彼らのように世界最高の仕事をしている人間の思考や発想や行動には興味があるので、今後もこれらの本ならば読むだろうし、その点では今回も面白かった。

2020年10月10日土曜日

テクノロジーは貧困を救わない

題名は経済だが、主題は教育。

著者が2004年から約10年間、インドでデジタル技術と職業や一般教育を実践してきた結果、経験を書いてる。

結論を書くと、教育に重要なのは、全体の傾向を把握しながら、個別の問題を認識し、年単位で持続可能な知識と行動力を持つ教育者(大人)であり、子供(生徒)の自主性は確率的な幸運に過ぎず、自主性がある場合と無い場合に両対応でき、規則と自由を容易に往復が可能な環境と人材に道具(科学技術)が便乗してるに過ぎない。

著者の具体例はともかく、本書の繰り返される主張そのものは誰もが知ってる極めて常識的で何の驚きもないが、結局は不可能を自覚しながら、あらゆる手を打つ。理想論であり不動の現実である。

問題はコスト。環境が劣悪なほど、初期費用が大きく、仮に教育者が有能でも道具や環境の維持する定期整備などが必須。つまり肩をすくめるアトラスが肯定した事は、経済格差を中心に教育、知能、幸福の協力や分配に寄与しない。

女が学力的に有能になると、仕事は無いのに結婚資金がだけが値上がるなど、インド地方など環境の問題も、教材や内容には関知できないが影響する要素。結局のところ教育は、人種や性別や世代を問わずに学習する要素と、現実に可能な物理的で文化的な状況を両立せねばならない。

理解力や論理性や判断速度は主に識字率に依存する。パソコンを使えるかどうかだけでなく、ゲームをするか勉強をするか、消費するか作成するか、その実現や傾向は基礎学力に依存する。と同時に個性も影響する。

富裕層の有能な教育とは、有能は教師が9箇月*12年ずっと進捗を把握し補佐して実現する。そして、それを経験してる生徒は人口の1割以下。

[PISA]格差を埋めない学力の平均と中央の罠。上層は世界の上位に入るが下層は低能のまま。全体の底上げに寄与していない国家単位の教育政策(アメリカの格差)。OECD生徒の学習到達度調査(PISA)

結局のところ、現実に可能で必要なのは万策であり万能ではない。

教育の融通性について思うのは、例えば、ある美女が教師で、テスト結果次第では性的な褒美を与える環境で能力を発揮する生徒(男や同性愛)もいるはずだが、この方法は教育や社会が安定してるほど許されない。

当然ながら、教師や教材ではなく、生徒が問題の場合もある。学校教育だけでなく、職業訓練や業務システムなど大枠で実現可能であり実行しても、怠惰や汚職を廃絶できない。地方農業などは、教材の内容が人種や方言が異なると理由で内容が無視され取り組まれない。

これらをやる気の有無と壱蹴するか、母国語と違い交換が必要な教材と判断するか。当然ながら低能に必要なのは後者であり前者ではない。仮に確率的に前者が該当しても、底上げのためには後者が必須。

本書は結局のところ道徳論であり、理想と行動と忍耐を万人に求める。読み書きソロバンからクーデターまで人知が及ぶ行動と結果に分野を限らず言及されてる。可能なのに実現されない提供者が損をしない形の共有や、長期的な利益より短期的な損害を優先する立場や善悪の戦い。

本書の具体的な記述に当てはまらない事はいくらでもあるが、有史から当てはまる様々な歴史的な出来事から、現在の日本不況と格差を意図して継続する政府など、代入は幾らでも可能な内容であり、本書から幾つか得られる点があるが、それ以上に、発展はしても改善されない人類に辟易する。

2020年10月8日木曜日

天才の7つの習慣と全く解決されない教育格差の問題

天才の7つの習慣
  • 1人の時間を作る
  • 責任感を持つ
  • 創造性を磨く
  • 多様性を受け入れる
  • 物事を深く分析する
  • 運動をする
  • 外国語を学ぶ

全部当てはまるし、少なくとも幾つかは自主的に楽しめる要素なのに(推定)IQ100以下である。

彼らと自分で何が違うのかと言えば、本書で当てはまるのはこれだった。自分を信じてくれる人の大切さ。環境に恵まれた上で、どれだけの結果は証明不可能だし、環境は要素の半分に過ぎない。しかし、成人後の40年より成人前の20年のほうが余程重要だと考えられる。永山則夫努力には保護者的存在からの愛情や賞賛、尊重などが伴わなければ永続しない

子どもは40000回質問するでは、子供が指さした物への親の反応で、さした物を貰える、さした物が何か教えて貰える、など子供の行動と内容の和が異なり性格に影響する。出来ない子供を怒るのはしかたがないが、「幾つもの手段と道具=環境」を提示できない親や教師に囲まれた子供はどうすれば良いのだろうか。それこそ天才は独立して可能な事も、不出来な子供にこそ優れた教育者や道具など環境が必要なのに、実際は逆である。

2004年にインドの貧民層にデジタル技術を中心に教育や提供をした経験を書いたテクノロジーは貧困を救わないには、富裕層(有能)な親が子供の教育に不可欠として、知識や道具ではなく質問に答えられ可能な限り時間に応じられる教育者(大人)に金を出してる、とある。

本だけで充分な個体もあれば、時間が必要な個体、更に異なる道具や環境が必要な個体もある。親、教師、国はこれらに全く対応できていない。あるいは、対応する気がない。結局のところ、天才であるかどうかよりも、誰であれ扱える環境が存在しない限り、そもそも天才すら定義できないのではないか。

興味と行動はあっても、時間と金と知能が無い身からすると、やる気があるほどつらい現実が続くだけのように思える。

黙示の島 佐藤大輔

彼の作品は皇国の守護者しか読んでいない。未完の羅列で有名なので単発で読めるとしてコレを選んだ。

セックスの必然性。本来B級映画のすぐ寝る男女に作品の必然的な設定がある。本来は男を喜ばせるだけの売女要素を作品の根拠にするのは明石散人の鳥玄坊にも言える。登場人物が自分たちの行動を異常と自覚して展開するのは面白い。

少数派の特権と[異常者/逸脱者]の矜持。核心を共有した[仲間/家族]。男の英雄願望を満たす大衆娯楽ではあるが、彼の場合は自己愛が強いのも自覚しながら逸脱者がどう扱われるかも現実的で自虐的でもある。恋愛に関してはあまりに直球で幅が無いのは相変わらず。彼の売りではそこではなく、逸脱者同志の配慮や共感や描写の細やかさと言ったらない。

皇国の守護者は戦争ものなので、準備から本番まで全要素の連続性が重要なので飽きる点が無かったが、これは所謂ゾンビものなので、事が起きてからは様式の消化だけで、前提となる設定と結論は面白いが、ドタバタ部分が退屈だった。

富野由悠季と作風が似ていて異なる、特に目立つ女の扱い。佐藤大輔の女は、男のための女しかいない。男に反発や説教をしても、作中のor読者の男を満足させる存在でしかない。言動自体がしっかりしてる点で萌えだけに終わっていないから楽しんで読めるが、根本は男にとっての萌えでしかない。

動物から人間/アウトブレイク。展開としては納得がいくが、もう少し島自体の環境や体系がわかるようなパニック場面が欲しかった。

個人的に、彼の文章は読みやすい。登場人物が極端な逸脱者、激情なのに文章は淡白で英語の関係代名詞のような延長が極端に少なく解説や比喩は多様されても装飾が少ない。作品の内容とは別に、文章という点で佐藤大輔と京極夏彦は自分にとって2トップ。

2020年10月6日火曜日

菅野よう子の習慣が書いてあると聞いて「1日ごとに差が開く 天才たちのライフハック」

菅野よう子が取り扱われてると聞いて読んだ1日ごとに差が開く 天才たちのライフハック

しかし、内容は軽薄だった。量は2/235頁で、大学時代に絶対音感がありピアノが弾けるから耳コピに利用されてた話を、絶対音感があり把握が容易な彼女の能力は伏せられ、1曲の理解にどれだけ時間がかかるかも示されず、ただ分析するのを習慣にしたと書いてあるだけで、著者が本人から直接聞いた話ですらない。彼女の具体的な苦労や工夫は何も書かれていない。ポッカリした編曲の本や各作品の彼女のインタビュウを読んだほうが有益。彼女に限らずネットの散文をまとめただけの商品とは呼べない粗末な本だった。

2020年10月4日日曜日

武満徹の絶対音感

1998年に発売され2002年に文庫になった最相葉月絶対音感

日本における絶対音感の扱いと、当事者のインタビュウをまとめたもの。

個人的に面白かったのが武満徹の絶対音感に関する話。

NHK交響楽団の首席オーボエである茂木大輔は、絶対音感を持たず、実音を聞かずに楽譜を見ただけでは和音を脳内再生できないと告白している。若い頃はジャズピオアノをやっていたが演奏前の段階で苦労したそうだ。

そこで彼が同じ苦労をした人物として武満徹を挙げた。武満徹もピアノを使わずに和音を楽譜だけで脳内再生できずに苦労していたらしい。つまり、絶対音感は持っていなかったようだ。

2020年9月1日火曜日

沈黙 - 遠藤周作

映画は見たが原作は未読だった。

映画はあくまで3人称だが、原作は1人称で彼の本音、彼が見出したイエスが何か最後にわかる。

映画は、「転んだ」後の彼の本音がどういったものであるかわからないし、彼の死後の現代としての提示である。

タバコの世界史

タバコの世界史

アメリカの資本主義を盲目に礼賛する肩をすくめるアトラスでは煙草が重要であった。

アメリカの煙草と言えばインディアンだが肩をすくめるアトラスではインディアンには一切言及されず、自分も漠然とした印象しか無かったので今回コレを読んだ。

現在では煙草は基本的には百害あって1理無しとされる。

自分も煙草は特定の医療行為にしか価値はないと認識しているが、そもそも煙草をやると空腹感が無くなるのは、食糧に乏しい時代や環境で有益である。

故に貧者の薬とも言われた。

インディアンの煙草(葉巻)などの価値を語る時に、宗教の側面しか語られないが、上記の実益などを無視するのは、問答無用で有害と断ずるのと変わらない。

大航海時代前の煙草は、8000年から4000年前から中米と南米で用いられていた。

マヤ、インカ、アステカなどで万能薬とされ、虫歯には葉を直接こすったり塗ったそうな。

また、神話として、煙草は女の生まれ変わりであり、女自体は無意識の健康のためと男女の役割が明確に違う社会において煙草をやらなかった。

自分は煙草を全くやらないが、焼肉を食べた後だけやたらと吸いたくなるのは何故なのだろうか?

上村松園 明治の浮世絵は現代でも美女に見える理由

自分が上村松園を初めて見たのは2015年「うらめしや 冥途のみやげ」展。その時には堂々と看板に採用されていた。

恐らく、人生において目にする事は何度かあった筈だが、少なくとも絵や人名を明確に記憶したのは、この時だった。

2015年の時点で、月岡芳年鰭崎英朋など、浮世絵の様式でも時代が近いとちゃんと美女に見えると驚いて、その理由を考えた事もあった。

今回、彼女の絵を見て思ったのは顎の線である。

頭身や輪郭線の細さなど詳細の違いは幾らでもあるだろうが、それでも、目鼻の大きさや比率、髪型など大きな様式は浮世絵のままで後年が美女に見える理由は顎にあると見た。

拙作

実際、彼女の作品でも古臭さや美女に見えない絵もあるが、顎が水平に近いものがそれだった。

結局のところ、我々が見てる様式が時代が近いほど感覚も近いというだけの話だが、具体的な理由を1つ見出せた。