坂本真綾が歌手(自身)にとって転調は簡単だ、という発言をしたと聞いて、自分は同意した。
というよりも、転調の難しさは、転調したと気づかれずに転調する編曲の難しさと、ピアノのように調ごとに運指が異なる楽器に限った話であり、転調自体が難しいわけではない。
では、なぜいたずらに転調は難しいと言われるのだろうか。特に編曲も楽器も、へたしたら歌わない音楽を聞くだけの消費者に。
その理由は幾つかあり、考えられる項目を以下に記した。
- 自身の音域外の音程を無理に歌おうとしている
- 伴奏が転調を誘導していない
- 伴奏が転調を誘導しているのに、歌手(素人)が伴奏を聞いていない。
まず、音域について。これは作曲優先で、歌手に対して曲を合わせずに、曲に歌手が合わせる愚かなパターン。
次に、伴奏の転調の誘導。楽器を全くやってなくて、絶対音感どころか相対音感すら怪しい、趣味で歌うだけの人ですら、歌う前に自分が出せる音域の範囲で楽器から音程を誘導されれば簡単に歌える。そこに転調は関係無い。もしそれが出来ないなら全て同じ調で歌う事になるが、実際には歌手の音域の範囲内でそれぞれ異なる調の曲を簡単に歌ってる。つまり、転調の難易度は、発声の前の音程誘導があるかどうか。これは編曲にかかってる。
音域も誘導も、どちらも編曲の配慮であり、基本的に転調が難しい、やりにくいのは編曲の怠慢や不備があるから。伴奏の誘導がなく転調が出来て凄いでしょは、おおよそ大道芸の類で歌手や楽曲の魅力には何も寄与しない。
そして、編曲や伴奏が十分に配慮されてるのに難しい場合、これは歌手が伴奏を全く聞いていないパターン。これもよくある。
ヘッドフォンやイヤフォンやスピーカーは左右が決まってる。この左右を入れ替えても違和感すら抱かず全く気づかない人が結構いる。ヘッドフォンは基本的に左にケーブルがあるが、それを右からたらして、聞こえてくる楽器が左右反転してても全く気づかない人種。
その延長で、なんとなくまとまった音として感知しても、左右のここからポンとかキーンとかジャランとかそれぞれ楽器が鳴ったら、その音程を真似すれば良い、という事を全く出来ない人というのはそれなりにいて、つまり伴奏を聞いていない。伴奏の音程どころかテンポすら無視して自分だけの尺度で音楽的な時間や運動を人に合わせるという感覚が無い人。
この場合は、転調が難しいのではなく、そもそも転調前の音程や音感やリズムなど音楽の基本的な訓練が必要だという話。
これらが全て同一視されて、転調は難しいと誤解されている。
先にも書いたとおり、作曲編曲や演奏する一部の人にとって転調は難しい。それは間違いないし、坂本真綾も同じ趣旨で立場次第で転調は簡単だと言っている。
また、ひとくちに転調と言っても、メロだけ転調、伴奏だけ転調、誘導無し転調、誘導あり転調、転調の音程の高低程度、短期的な部分転調または借用和音など、転調の種類や難易度も様々であり、転調の実態を理解して発言してるとは思えない過大評価、過剰反応が乱立してるように思える。
転調は、用法,用量を守って正しくお使いください。