菅野よう子から離れて久しいアルバムだが、彼女が少年アリスで選んだアイリッシュ、ブリティッシュ、北欧系+aの曲調が多い。ただこちらのほうが内容は年齢層が高いというか、キャッチさよりもタイアップの脱却的な意図が窺える。
ここで書く音質とは、演奏の強弱表情やミックスやマスタリングの加工の結果全てを指す。その中で具体的に指摘出来る点だけ、楽器やコードや機材や方法などを挙げて書く。また、歌詞など音質とは無関係な要素にも多少言及している。
ユーランゴブレットの歌詞。自分は歌詞には基本的に頓着しない人間だが、なぜこの曲調で「隣の家の味噌汁」なんて言葉をぶっこんだんだろうか。味噌汁と脱皮は笑う。少なくとも釣られた。また、弦(ストリングス)が良い。フォルテ以外にも強弱表情あるんだよと言わんばかりの加減で。それがなぜFGOになると難聴量産兵器になってしまうのか。
空で歌えるほど好きな曲は無いが、非菅野よう子の坂本真綾アルバムとしては1番じゃなかろうか、と最初は思った。演奏や音色やミックスなど全体的に目立つものだけで売ろうという気が全くなくて、総じて仕事が丁寧。
しかし、最後まで聞いて考えを改めた。
お望み通り。はもともと先行で聞いててわりと肯定的だった。ちゃんと1周と2周でドラム演奏が違うのも集中せずに聞こえるし、なんちゃってジャズとしては良いのではないか。3m11sのDm9 11th、メロがP4度(11)、ピアノが5度でコードとしては珍しくないけどピアノが大きくてぶつかって聞こえるのが気になる。あと全体的にピアノでかい。
演奏、録音、ミックス、マスタリング、誰の功績かわからないがアルバム全体的にHHが繊細。
オールドファッション。3m19sあたりのキック。音色を優先したのかわからないけど、立ち上がりが遅いせいか1拍頭と4拍目の16刻最後と次小節頭のキックがずれて聞こえる。ただ音色なのか微妙なリズムずれなのか自分のリズム感なのか、わからない。
アルバムの流れとして、最初はブリティッシュ北欧系なのに段々と曲調がラテンになっていくのは意図した事なのだろうか? それとも単純に乗りを優先した結果なのだろうか。
火曜日。最初がF#の1度5度反復だが、自分にとって同じ動きで真っ先に思い浮かぶのは田村直美の光と影を抱きしめたままで、想起したのは虹色クマクマのサビをベース抜くとF#mで、これだけ聞くとTeppeを脳内再生してしまうのと同じように音程が同じだからかと確認したら、火曜日はF#で光影はG。半音違った。自分のガバ音感。
曲調の割にピアノの音質音響に広がりがなく狭いポップスピアノ。最初は弦とピアノだけだと思ったらどんどん楽器が足されて、意図するところがわからず混乱した。
1m55sのキック、録音段階でリミッタの加減を間違えたか、事故防止のリミッタが作用しすぎかと思ったが、恐らくサイドチェインでベースの減衰と復帰が極端なポンピングのせいで低音の時差を感じる。この時間限定のキックとベースの鳴りかと思ったら、曲中ここ以降ずっと挙動不審。しっとり泣かせる曲でこのキックとベースの音質は疑問。、タムも少しひずんでる。
トロイメロイ。この曲だけ何故これだけ歌い方が過剰に変化したのか不明。急にアニメ声を出し始めて驚いた。
細やかに蓋をして。ど頭からディエッサ感が凄く強い。特にホーキングとの差が凄い。火曜日と音質が近いというか駄目なとこが同じ。キックとベースの衝突が火曜日と同じだし、計測してないが、もしかして中域の飽和はこの曲が最大かもしれない。題名に反してミックスとマスタリングが全然細やかじゃない。
ディーゼル。陽気な曲なのに声だけじゃなくて全体の音質が鼻詰まり。ミックス段階でこうなのか、マスタリング段階のディエッサか不明。警笛(笛関係)が声の帯域とかぶってる。もっと定位と周波数を住み分けて欲しい。
今日だけの音楽。表題曲なのに声質にコンプやらディエッサやら加工が強すぎてきつい。恐らくはミックス段階ではなくマスタリング段階の犠牲になったのではないかとも思うが、そもそもサビはメロ以外の楽器が真ん中に集まりすぎ。ディーゼルと同じで凄くぶつかって聞こえる。色んなものが静かに無意識に響いて泣かせるという曲なのに、Reverbの人工品っぽさもまずい。しかもちょいちょいモノっぽく聞こえる。
主題曲じゃないなら何も思わないが、これだけリミックス,リマスタリングしてシングルで再販するべき、というくらい酷い。この編成と編曲と意味に対して音質がまるでついていってない。光あれに近いものがある。
2m30sで転調してるけど、これが自分がよく言う誘導タイプの転調。メロは転調前と同じ旋律を繰り返して転調前と転調後の共有音で着地してる。歌手は転調を意識せず伴奏だけが転調して、歌はそれに追従するだけで良い。
曲が目指す広がりに対して、実音(ミックス/マスタリング)が不足。というか曲がアルバムの均質の犠牲になってる感じがする。お望み通りは味付けが濃いとは言え、オールドファッションまではコンセプトと音質が一致してるのに、火曜日以降がぼろぼろ崩れてるのは何でなんだろう?
総評として、曲調の趣味はHidden Notes。コンセプトと音質の一致はホーキング。歌詞の強烈さはユーランゴブレット。火曜日以降は何かしら疑問と不満と違和感がある。光あれと今日だけの音楽だけリミックス(リマスタリング)して再販しよう。アルバムの主題曲がアルバム均質の犠牲になるのは悲しい。
先に書いた通り、最初は非菅野よう子のアルバムの中では最高かもしれないと思ったが、それは違った。コンセプト(思想)と音質の一致はDriving in the silenceが1番。歌詞の精神年齢が幼い(恋愛と自我)なのが不満だが、定位の振り方も細かく丁寧で、楽器それぞれの音質も強い加工を感じないように丁寧に加工している。多少キックとベースのポンピングが気になる曲もあるが、それでも今日だけの音楽よりはマシ。アルバムとしての今日だけの音楽は酷い曲だとベースがサイドチェインでレシオ2以上GR5dB以上でやったようなポンピングを感じる。ミックス段階でここまで過剰だったのか疑問だが、WAVES L3の設定を間違えたらよく起こるあの感じに近い。しかし、もっといい機材と熟練者がやった仕事だろうに、音質の決定権は坂本真綾、P、エンジニアの誰にあったのか気になる。