なぜ柳家さん喬は柳家喬太郎の師匠なのか?
読んでてつらかった。才能は努力に乗るものだが、出会いは完全に運で自分ではどうしようもない。
そして、彼らはそれぞれの幸福に至る出会いを得た。自分は笑いながらもつらかった。
自分にはここまで努力や覚悟や助力をしてくれる親や教師はいなかった。
自身で最後まで関わると決めた、ある意味で歪な関係の覚悟。
そこには美談におさまらない互いの人生の失敗もあろうに、拒絶や断絶を自ら許さず盲信や諦念でもなく継続する意思。
頁の量は平等だが、明らかに柳家さん喬の本。
というか、恐らく半ば遺書のつもりだったのではないか。
自分は小さんを知らないが、師弟の思い出話が美談というよりも人生を問わぬのを許さない前例というか、自分は頭の数頁からして泣かずに読めなかった。
特に、小さんの舞台に文字通り幕をおろさざるをえなかったくだりは。
生き方と死に方を問うすげえ本だった。